筆者は1年半以上の間、自宅の光回線・Wi-Fiを契約せず、月々わずか3千円台で、通信容量無制限のモバイル回線のみでのインターネット生活をしている。
この記事では、そんな楽天モバイル、Povo2.0、5Gホームルーターを組み合わせた高速・激安・容量無制限の画期的な自宅ネット環境の構築方法と、それによる節約効果を紹介する。
こうした光回線なしの生活を実現できたのは、楽天モバイルやpovoなどの5Gに対応した激安のモバイル回線の登場と、容量無制限・速度制限なしで5G/4Gを利用できるプランの登場が背景にある。
- モバイル回線だけで本当に生活できるのか?
- 楽天やpovoの5G回線のスピードは光回線と比べてどうなのか?
- 実際の月々のコストは?
こうした疑問に全てお答えしつつ、筆者が実際に1年半にわたって利用している、5Gモバイル回線+ホームルーターのみで自宅のネット回線を構築する方法を紹介する。
引っ越しを機に、あるいは節約のための通信量の見直しを機に、自宅のネット環境をどうするか検討中の人は、ぜひこの記事を参考に、モバイル回線生活を検討してみて欲しい。
従来の固定回線の問題点とストレス
引っ越しなどをすると、まず最初に考えなくてはいけないのが、自宅のインターネット回線の契約をどうするかだ。
しかし、ほとんどの光回線プランは、2年間など契約期間の縛りがあり、途中で解約すると違約金が発生するので、賃貸物件を転々としている一人暮らしユーザーからすると、かなり契約のハードルは高い。
また、キャッシュバックキャンペーンなど、あの手この手でお得感を出すPRが行われているが、実態は、6ヵ月後に自分で申請しなければキャッシュバックを受け取れなかったりして、数万円を受け取り忘れて後悔することも少なくない。
「2年以内に転居をする可能性があるため、どうしても自宅のインターネット契約をしたくない。」
「それでも、高速なインターネットは仕事・プライベートのために必須である。」
こんなジレンマに陥っている人はとても多いのではないか。
筆者も、そんなジレンマの中で、自宅の光回線を契約せずに生活する決断をした1人だ。
楽天モバイルやpovoなどの格安のキャリアを利用することで、安定・高速のネット回線を容量無制限で利用できる。
また、利用する端末も、全てをSIMフリーのスマートフォンやホームルーターなどで揃えることで、解約した時の違約金も一切ない。
プロバイダの選択で悩むことも、キャッシュバック申請を忘れることも、引越しの際にネット回線の違約金を気にすることも、もうなくなった。
モバイル回線生活は、従来の固定回線・光回線の問題を全て解決してくれる。
モバイル回線生活を叶える最強の通信プランと端末
ここから、モバイル回線だけで生きていく生活を実現するために、どの通信キャリアを選び、どのようなスマホ・Wi-Fiルーターが必要になるかを解説していく。
最初に結論をお伝えしてしまうと、以下のようになる。
<契約する通信キャリア2つ>
<用意する端末2つ>
- SIMフリースマホ
- 日常使い用+テザリング用
- 楽天モバイルのテザリング活用で自宅のネットを全て賄う
- Speed Wi-Fi HOME 5G L13
- Povoのスポット利用
- バックアップ回線&自宅内Wi-Fiネットワークはあると便利(スマートホーム系)
- auの5G/4G周波数と相性ベスト、楽天モバイルの4G/5Gも使える
基本は、楽天モバイルのSIMをスマートフォンに挿して日常利用しつつ、普段はそのスマホからのテザリングで、PCやタブレットなど、自宅のネット回線を全て賄う。
ただ、楽天モバイルの4G回線は3大キャリアと比べると若干速度が劣るので、大容量ファイルを急いでダウンロードしたい場合など、どうしてもパワーのある回線が必要になった時の臨時回線として、Povo2.0をバックアップとして持っておく、という布陣になる。
以下では、これら2つの通信キャリアと、2つの端末を選んだ理由や、選び方を詳しく解説していく。
メイン回線の通信キャリア:コスパで楽天モバイル一択
固定回線なしでモバイル回線のみで生活をするには、通信プランの選定条件として、速度制限がないこと、容量制限がないことが必要不可欠になる。
また、運良く自宅がサービスエリアに含まれていれば、5Gに対応しているプランを選ぶのが当然ベストである。
ただ、最も高速の5Gのミリ波が屋内に届く家など実際にはほとんど存在しないので、4Gが容量無制限で使える時点で、その通信プランは合格と言える。
docomo、softbank、au、楽天の主要4キャリアの主要プランで、本当の意味で月間の使用量の制限がないのは、docomoの「eximo」と楽天モバイル「最強プラン」の二つのみだ。
キャリア | プラン | 月額(MAX時) | 制限 |
---|---|---|---|
docomo | eximo | 7,315円 | なし |
SoftBank | ペイトク無制限 | 9,625円 | 200GB/月 |
au | 使い放題MAX | 7,238円 | テザリングは30GB/月 |
楽天 | 最強プラン | 3,278円 | なし |
SoftBankの「ペイトク無制限」は9,625円と高額かつ月200GBまでの制限がある。またauの「使い放題MAX」に至っては7,238円でテザリングが月30GBまでというあまりにも小さすぎる制限があるので論外だ。
楽天モバイルの「RAKUTEN最強プラン」は、月々3,278円と格安で、楽天回線エリアなら高速で完全データ使い放題、かつテザリング制限もなしで圧倒的に魅力が大きい。
docomoの「eximo」は、7,315円と楽天よりずっと高いものの、容量制限・テザリング制限ともにないので悪くはない。
が、後述の通り、楽天モバイルとPovo2.0を組み合わせることで、高速通信が必要な時だけスポットでau回線を利用すれば、(もしあるとしても)楽天モバイルの欠点は補えるので、わざわざ4,000円もプラスして「eximo」を契約する理由はない。
ただ、docomoのサービスエリアマップを確認して、5Gのミリ波エリアに、もし運良く自宅が含まれていたら、docomoを選んでも良いかもしれない。ミリ波でない5Gエリアは、含まれていても気にするほどの速度の向上は無いので、楽天で十分だろう。
(ちなみに、都内在住の筆者の環境では、ドコモのパケ詰まりが酷すぎて、深夜以外は何時に試しても楽天モバイルの方が速度が早く、楽天モバイルが価格も速度もベストだった。)
サブ回線の通信キャリア:Povo2.0は24時間使い放題がアツい
Povo2.0は、KDDIが運営するオンライン専売ブランドだ。
auの5G回線、4G回線をそのまま利用できるが、月額基本料が0円で、アプリで「トッピング」を購入することでモバイル通信ができる。
中でもメリットが大きいトッピングが、「24時間使い放題 330円」だ。
「今日はNetflixでドラマを全話ダウンロードをしたい」なんて日に、330円課金するだけで、auの回線でスピーディーに動画ファイルをダウンロードする、という使い方ができる。
しかも、記事執筆時点では、「24時間」と書いてあるが、実際には、最大で47時間59分利用することができる仕様になっている。
このトッピングを購入した翌日の24時まで使用できることから、購入したのが例えば6月1日の午前1時だったとして、6月2日の23:59まで利用できるので、実質ほぼ丸2日使えてしまうのだ。
メイン回線で選んだ楽天モバイルは、どうしてもauなどの他の3大キャリアと比べると、若干速度が劣るのは事実だ。
大容量のビデオを複数ダウンロードしたい場合など、楽天モバイルでも一応時間が経てばダウンロードはできるのだが、待ちたくない・高速回線が欲しい、という日もあるだろう。
また、モバイル回線生活で最も怖いのが、メイン回線で依存している通信キャリアの通信障害などがあった場合に、インターネットから完全に切り離されてしまい、仕事に差し支えるリスクだ。
そういった日のために、24時間単位で課金して、au回線をスポットで利用できるPovo2.0を用意しておくことで、楽天モバイル1本で生活することの不安を解消することができるのだ。
SIMフリースマートフォンでテザリング
メイン回線である容量無制限の楽天モバイル「最強プラン」は、毎日使用しているスマートフォンに、物理SIMカードもしくはeSIMを挿して利用する。
かつてはSIMロックがかかっていて、楽天モバイルで使えない端末も多かったが、ドコモやauなどのキャリアから購入した端末であっても、2021年秋以降に販売されていれば、SIMロックがかかっていないはずなので、そのまま楽天モバイルで使用することができる。
最近では、SIMフリーでスペックも高いAndroidスマートフォンが普通にAmazonで販売されているし、iPhoneもAmazonで販売されているものやApple公式で販売されているものは当然にSIMフリーで、楽天モバイルで使用できる。便利な時代になったものである。
ただ、この状態ではスマートフォンでしか楽天回線を利用できないので、PCやタブレットでインターネットを使用したい場合には、テザリングが必須となる。
筆者の場合、SIMフリーのiPhone 12 miniと、Mac Book Airを使用しており、USBケーブルでiPhoneをMacに接続することで、iPhoneの楽天回線をMac Book Airでも利用できるようにしている。
筆者のおすすめは、なによりも「USBテザリング」である。
Wi-FiテザリングやBluetoothを使った無線テザリングは、USBを使った有線テザリングと比べると、どうしても速度が遅くなってしまうためだ。
また、iPhoneとWindowsの組み合わせでWi-Fiテザリングを行うと、途中で回線が切れたり、Wi-Fiの選択肢にiPhoneが出てこなかったり、不安定でストレスが溜まる。
その点、USBテザリングを使えば、接続が切れて不安定になることもなく、速度もスマホから直接使う場合と全く変わらないので、ほぼ固定回線のように利用することができて快適だ。
ただ、唯一NGの組み合わせは、MacとAndroidスマートフォンの場合だ。Macでは、AndroidのWi-Fiテザリングは可能だが、USBテザリングはサポートされていない。
一方で、Windowsであれば、AndroidのUSBテザリングはもちろんのこと、iTunesをインストールすることで、iPhoneのUSBテザリングも利用可能である。
ホームルーターで自宅内のWi-Fiネットワークを常設
モバイル回線のみで生活するために不可欠なもう一つのパズルのピースは、5G通信に対応したSIMフリーのホームルーターである。
Povo2.0のSIMカードをホームルーターに常時挿しておいて、Povoの「データ使い放題 24時間」トッピングでauの5G回線を利用したいためだ。
Netflixのドラマを一括ダウンロードしたい日など、どうしても高速大容量の通信が必要な日に、臨時でWi-Fiを有効にするのだ。
また、もう一つホームルーターが必要な理由として、スマートホーム系のデバイスが、自宅内でのWi-Fiネットワークを必須としている場合がある点が挙げられる。
例えば、自宅の玄関の鍵や、エアコンのスイッチ、温湿度計、監視カメラなどを確認・遠隔操作できる「SwitchBot」を利用するには、自分が家にいない時も、常にWi-Fiが自宅で飛んでいる必要がある。
「SwitchBot」などのスマートホーム系に限らず、自動掃除機などでも、自宅のWi-Fi経由で掃除のスケジュールを同期している機種もあるので、なにかとWi-Fiが必要になってしまう人は多いはず。
こうしたちょっとしたWi-Fiを使用する電化製品のためだけに、モバイル回線生活を諦めたくない。
そこで救ってくれるのが、格安運用できるSIMフリーのホームルーターなのだ。
上述の通り、筆者は、au回線である「Povo2.0」を、楽天モバイルのバックアップ回線として使用したいので、ホームルーターはau系のUQから販売されている「Speed Wi-Fi HOME 5G L13」を選択した。
未使用品・中古品が1万円台で流通しているので、高機能でありながら、格安で入手できお得感もある。
「Speed Wi-Fi HOME 5G L13」の良いところは、au系列の端末だけあって、auの4G/5Gの周波数を全てカバーしているため、Povo2.0の通信プランとの相性が非常にいい点だ。
また、さらに都合のいいことに、「Speed Wi-Fi HOME 5G L13」は楽天モバイルの4G/5Gの周波数にも対応している。
何らかの理由でスマートフォンのテザリングでは間に合わない場合などに、楽天モバイルのSIMカードをスマホからL13に挿し替えることで、ホームルーターで楽天モバイルを使用することもできてしまうということだ。
実際の使用感と速度テスト
以上の内容をまとめると、筆者は次のような構成で自宅のネット環境を構築している。
- 楽天モバイル最強プラン(iPhone 12 mini)
- USBテザリングでMac Book AirやMac miniも接続
- Povo2.0(Speed Wi-Fi HOME 5G L13)
- 必要な日だけ「データ使い放題」トッピング追加
- SwitchBotを常時接続(「1GB/180日間」トッピングで常設)
あくまで東京都心に在住する筆者の環境でのテストにはなってしまうが、それぞれの端末・通信プランの速度を計測してみた結果を紹介する。
スマートフォンに挿した楽天モバイルの速度
筆者の自宅は、残念ながら楽天モバイルの5Gエリアに入っていないので、4Gでの測定結果となる。
それでも、ダウンロード50Mbps、アップロード44Mbpsと上々のスピードだ。
50Mbpsというと、100MBのファイルをダウンロードするのに16秒、1GBのファイルをダウンロードするのに2分半ちょっとかかる計算になる。メールの添付ファイルなどは、どんなに大きくても数秒待てば開くことができるので、仕事や勉強に支障はないはずだ。
また、エンタメ面でも、4Kの動画をNetflixなどでストリーミングするのに必要なスピードは、25Mbpsとされているので、1台の端末で4K動画を視聴するのは問題なくできる程度だ。
もちろん、速度にこだわりを持って自宅に固定の(良質な)光回線を引いている場合などは、200〜400Mbpsなどもっと高速なケースも多いだろうが、この程度あれば普通のユーザーの日常生活は満たせると思われる。
実際、筆者はほぼ常にYouTubeは流しっぱなしだし、プログラミングもするし、数GBのAIモデルも頻繁にダウンロードするし、画像を多用したブログも書くしで、世間的にはヘビーユーザーであろうが、楽天モバイルだけでも殆ど生活に支障はない。
もちろん、動画編集者やオンラインゲーマーで、超大容量の通信を高速で行いたい場合には向かないだろうが、多くの一般人は楽天モバイルだけで生活できると思われる。
5Gミリ波が利用できれば、本当にこのあたりの課題も乗り越えられるはずなので、楽天モバイルでも5Gエリアが拡大して、いつか筆者の自宅も5Gが届くことに期待したい。
ホームルーター経由のPovo2.0
とはいえ、旅行などでの飛行機移動の前に、Netflixで大量のドラマを高画質でダウンロードしたい場合など、楽天モバイルでのダウンロードスピードに不満がないではない。
そのためのPovo2.0のバックアップ回線なわけだが、「データ使い放題 24時間」トッピングを利用した状態で、Speed Wi-Fi HOME 5G L13にiPhoneからWi-Fi接続してスピードを測定すると、次のような結果となった。
筆者の自宅は、auのエリアマップで言うと「5G sub6」エリアに該当する。ミリ波ではないので超高速ではないが、4Gエリアよりは早いはずだ。
結果はダウンロード185Mbpsと、楽天モバイルの3倍以上の数値で、圧倒的に高速だった。
アップロードはモバイル回線ではありがちな低速(11Mbps)に留まり、アップロード速度は楽天モバイルの方が早かった。
180Mbpsというスピードは、もはや固定の光回線よりも早い場合もあるほどのスピードである。固定回線を引いている人でも、100Mbps前半で留まっている、というユーザーも多いのではないか。
もちろん、モバイル回線は、周辺の混雑具合によっても左右されるため、常にこのスピードが安定して維持できるわけではないが、楽天モバイルが低速で困った日には、Povo2.0を使うことができるので、予備として用意しておくには十分すぎるクオリティだ。
1年半経過した感想:光回線なしでも余裕
こうして、楽天モバイルのiPhoneと、Povoを使ったホームルーターの2回線・2台体制を引いて1年半が経った。
筆者は、仕事でも私生活でも、1日中パソコンとスマートフォンを触っているタイプの人間だが、それでも光回線がどうしても必要だと思ったことは一度もない。
外出先や、自宅での日常生活では、iPhoneと、iPhoneのテザリングを利用したMacBook AirとiPadでネットを利用している。
通信制限がないため、スマホの残容量を気にする必要もなく、MacBook Airで仕事のZOOMミーティングをビデオオンでどれだけやっても、YouTubeを流しっぱなしにしても、全く支障がない。
実際、どれくらい通信量を使っているのかを、楽天モバイルのアプリで確認してみると、日によっては10GB以上使っている日もあるが、1ヶ月あたり100GBほどを利用しているようだった。
これが月々3,278円で使えているのはかなり驚きだ。スマホのデータ関連のストレスが、楽天モバイルにしてから全くなくなったのは本当に嬉しい。
また、万が一、楽天モバイルが日中混雑していて、仕事の重要なWeb会議などの通信が不安定だったら、Povo2.0のアプリで「24時間使い放題 330円」トッピングを使うことによって、その日だけau回線を使うこともできる。
バックアップ回線まで使用したとしても、月々かかるお金はスマホから自宅まで全ての通信費を足し上げても4,000〜5,000円に抑えられるので、光回線とスマホを両方契約する場合と比べたら、圧倒的な節約効果がある。
しかも、契約期間の縛りもないし、違約金もないし、自宅の工事も不要だし、引越しをしても回線契約を切り替える手間もない。
まさにメリットしかなく、モバイル回線だけでも、固定回線を代替できてしまうことが実証できたといえよう。
皆さんの生活を振り返って、本当に固定回線が必要なのか、改めて考え直してみることをおすすめする。
YouTuberで大容量の動画をアップロードしなきゃいけない、といったことでもない限り、普通のビジネスパーソンや、普通の学生は、モバイル回線でも十分生活していける時代になったと言えるのではないだろうか。