2026年9月2日、Meta Superintelligence Labs が、新たなモデルMuse Spark 1.3 を公開した。Muse CodeとAPIで同日から利用できるようになっている。8月登場の前版1.2からわずか4週間後のリリースで、ハイペースな開発が続いている。
標準価格は100万トークンあたり入力 $1.25 / 出力 $4.25 だが、入出力データをMetaのモデル学習に使うことを許可すると、$0.10 / $0.20 という激安価格で提供される。ClaudeやGPT、Geminiとは比較にならない異次元のコストパフォーマンスだ。
マーク・ザッカーバーグは、この価格を「almost too cheap to meter(料金を測る必要すらないほど安い)」とまで表現している。
Metaといえば、これまでオープンウェイトのLlamaファミリーを公開してきた。しかし、Muse Sparkは(現時点では)非公開モデルであり、従来とは異なる戦いを仕掛けてきた格好だ。
実務的には、Claude, GPT, Geminiなどの他社モデルではコストがかかりすぎて実行できないような、難易度の高いバルク処理や大規模なコードベースの作業などで、選択肢の一つとして頭に入れておくと良いだろう。
Muse Spark 1.3の概要:「最安」のフロンティアモデル
「Muse Spark」は、2025年6月に発足した Meta Superintelligence Labs によるモデルシリーズだ。Llama 1〜4シリーズのオープンウェイト路線と異なり、Muse Sparkのウェイトは公開されていない。
MetaのチーフAIオフィサー(Alexandr Wang氏)は、「Muse Spark 1.3」は、Claude Fable 5.1に匹敵し、GPT-5.6 Solより優れていると強気な発言を行なっている。実際、ベンチマークの結果を見ても、ClaudeやChatGPTなどの競合に多くの項目で肉薄している(出典: developer.meta.com, 2026-09-04取得)。
| ベンチマーク | Muse Spark 1.3 (max) | Muse Spark 1.2 (xhigh) | 競合の最高値(モデル) |
|---|---|---|---|
| DeepSWE v1.1(長期エージェント型コーディング) | 75.4 | 55.0 | 74.0(Claude Opus 5。GPT-5.6 Sol は 73.0) |
| MRCR 512K–1M(長文脈検索) | 98.1 | 55.5 | 73.8(GPT-5.6 Sol) |
| Terminal-Bench 2.1(ターミナル作業) | 88.8 | 82.9 | 88.8(GPT-5.6 Sol・同点) |
| GDPVal-AA v2(知識労働・Elo) | 1754 | 1615 | 1824(Claude Opus 5) |
| OSWorld 2.0(PC 操作・partial) | 66.9 | 47.6 | 68.3(Claude Opus 5) |
独立評価機関のArtificial Analysisも、Muse Spark 1.3 xhigh を Intelligence Index 61、max を 62 と報告している。Claude Fable 5.1 の 66、Claude Opus 5 の 63 に次ぐ水準である。コストパフォーマンスも高く、1タスクあたり約 $0.55 で、Index 59 以上のモデルでは最安である。

出典:Artificial Analysis, 上位の性能を持つがCost per Taskが安価
Opus 5やGPT-5.6と肩を並べるフロンティアモデルを、激安で使うことができる、というのが消費者側から見たMuse Sparkの存在意義の一つだ。しかも、データの学習利用を認めれば、更に安価な1Mトークンあたり$0.10 / $0.20 という破格のコスパで利用することができるのは革命的だ。
今回登場した「1.3」は、基本仕様は 1.2 から変わらない。入力はテキスト・画像・動画・PDF、出力はテキストのみに対応しており、コンテキスト長は 1,048,576 トークン(1M)、知識カットオフは公表されていない。
ちなみに、Meta Superintelligence Labsの開発ペースはかなり早く、7月から毎月新しいモデルを投入している。さらに、Muse Spark より大きい次期フラッグシップ「Watermelon」も開発を行なっているとされる。
- 1.0(2026-04-08): API一般公開なし
- 1.1(2026-07-09): Meta Model API 公開プレビュー。当初は米国限定
- 1.2(2026-08-05): Muse Code(ターミナル型コーディングエージェント)と同時公開。世界へ開放
- Muse Glimmer 30B(2026-08-10): Apache 2.0 のオープンウェイト
- 1.2 Contributor(2026-08-21): 1.2本体の割引版
- 1.3 + 1.3 Contributor(2026-09-02): 本体と割引版が同日公開
Muse Sparkのオープンウェイト版の公開はザッカーバーグによっても予告されているが、現時点では未実行だ。Llama時代のオープン路線の転換は残念だが、巨額のAI投資を正当化するためにはやむを得ないのかもしれない。
実際、Metaのモデルがベンチマーク上位に名を連ねるのは久しぶりで、Muse SparkでようやくAI開発競争にMetaが戻ってきたという印象もある。
無料で試すならOpenCode、約21分の1の割引枠も
Muse Sparkを実際に使う方法としては、主に以下がある。
| 手段 | 料金 | 向いている人 |
|---|---|---|
| Muse Code | 月額 $5 / $15 / $50 | ターミナルでコーディングに使う人 |
| Meta Model API(標準) | $1.25 / $4.25 | 機密情報を扱う人 |
| Meta Model API(Contributor) | $0.10 / $0.20 | 学習利用を許諾できる人 とにかく安価に使いたい人 |
| OpenCode(contributor-free) | $0(期間限定) | まず無料で触りたい人 |
※料金は100万トークンあたり入力 / 出力。2026年9月4日時点
Meta Model APIにFacebookアカウントでログインすれば、PlaygroundでMuse Spark 1.3を容易に試すことができる。

Meta Model API は、OpenAI SDK と互換があり、base URL、API キー、モデル IDを差し替えるだけでMuse Sparkを使える。Claude Codeのような他社のハーネスで、Messages API 経由でMuse Sparkを使うことも可能だ。

「Contributor」枠では、大幅に安価に利用できる代わりに、Meta がコンテンツを「train, develop, evaluate, and improve」に使うことを許諾することになる。利用するには、APIでモデルIDをmuse-spark-1.3-contributorにするだけで良い。
また、ターミナルで動くMeta公式のコーディングエージェント「Muse Code」も用意されており、月額プランが存在する。現在は、月額 $5 / $15 / $50 の3プランで提供されており、コーディングに使うなら第一選択肢となる。
唯一、無料で使える選択肢が、「OpenCode」という汎用コーディングエージェントアプリを経由する方法だ。OpenCodeが公式に提供しているモデルの中に、Muse Spark 1.3のContributor枠があり、期間限定ながら無料でコーディングに利用できる。
Claude CodeでContributor枠を割安で使うもよし、OpenCodeを導入して無料枠を使うもよし、フロンティアモデルを格安/無料で使えると考えると、かなり魅力的な選択肢といえよう。

Muse Sparkの「Contributor」枠の使い所・注意点
ただし、Contributor枠を使うには、それなりの注意が必要だ。
Contributor 枠では入出力が学習・開発・評価・改善に使われる一方、データの保持期間と削除手続きは規約に明記されておらず、一度送信してしまったデータは消せない可能性が高い。また、規約内で機密・個人情報・契約上秘密のコードの送信も禁止されている。
機密・個人情報を含むデータや、自分が著作権を持たないコードベースで、Contributor枠を使うことは避けた方が良い。標準料金で見てもMuse Spark 1.3は比較的安価なので、そもそもContributor枠をわざわざ使う必要がない、という考え方もありだ。
| モデル | 入力 | 出力 | 備考 |
|---|---|---|---|
| Muse Spark 1.3(標準) | $1.25 | $4.25 | 学習に使わない |
| Muse Spark 1.3 Contributor | $0.10 | $0.20 | 学習許諾が条件 |
| Gemini 3.8 Flash | $0.75 | $3.75 | 2026-12-31 までの導入価格。2027-01-01 から倍額 |
| GPT-5.6 Sol | $4 | $20 | 11月下旬までのプロモ価格 |
機密・個人情報がなく、とりあえず一番安いコーディングエージェントが使えれば良い、というシチュエーションが身近にあれば、積極的にContributor枠を使ってもよいだろう。
Muse Spark 1.3を、各推論レベルで色々試してみた
Muse Spark は推論モデルで、reasoning_effort に minimal / low / medium / high / xhigh の5段階を指定できる(none は非対応)。推論トークンは本文と同じく課金されるが、中身は暗号化され API からは読めない。
xhighにすると回答の質は上がるが、回答時間が長くなり、トークンコストも高額になる。
コストと精度のトレードオフのバランスを見つける必要があるが、実際に、以下のような実験を行なってみた。
実験では、標準枠の muse-spark-1.3 を Responses API から呼び、medium と xhigh を交互に各3回ずつ、2種類の課題で比べた。課題は次の2つだ。
- 和暦→ISO 8601 変換関数(コーディング課題): 大正〜令和の日付文字列を
YYYY-MM-DDに変換する Python 関数を書かせ、改元日の境界(昭和64年1月7日は有効、1月8日は無効など)・閏年・全角数字・空文字を含む24ケースのテストで採点。 - 3つ組の数え上げ(純粋な推論課題): 固定した25個の整数から「和が100になる3つ組」の数を1つの整数で答えさせ、正解と照合。
| 課題 | effort | 所要時間(平均) | 出力トークン | うち推論 | 1回の費用(標準) | 正答 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 和暦変換 | medium | 36秒 | 3,520 | 3,013 | $0.015 | 3回とも 24/24 |
| 和暦変換 | xhigh | 100秒 | 7,232 | 6,770 | $0.031 | 3回とも 24/24 |
| 3つ組 | medium | 61秒 | 7,865 | 7,854 | $0.034 | 3回とも正解 |
| 3つ組 | xhigh | 131秒 | 10,518 | 10,507 | $0.045 | 3回とも正解 |
出典: 筆者実測(n=3 の平均。usage.output_tokens と usage.output_tokens_details.reasoning_tokens の値。)
xhigh は medium に対し、和暦変換で所要時間 2.8倍・費用 2.0倍、3つ組で所要時間 2.2倍・費用 1.3倍だった。一方で、正答率は両設定とも100%で、この難易度のタスクでは、 xhigh の追加コストに見合うリターンはないと言える。
同じ設定でも推論トークンのばらつきは大きく、3つ組では medium が 5,858〜11,133、xhigh が 7,999〜14,480 と、設定が異なっても生成トークン量が同等になる時もあった。reasoning_effort は、推論量の強制的な上限ではなく、大まかな傾向を示すパラメータに過ぎないようだ。
Artificial Analysis は、max 設定が xhigh より GDPval-AA v2 で 62%、Tau3-Bench Banking で 28% 多く推論トークンを使うと報告している。筆者の実測でも、medium→xhigh で推論トークンが 1.3〜2.3倍に増えており、xhigh 以下でも同程度の傾向が見えた。
「Muse Spark 1.3」の使いどころ
Muse Spark 1.3のコストパフォーマンスの高さは圧倒的だ。
GPT-5.6やOpus 5などに近いフロンティア級のそこそこの性能を持ちながら、コストを気にせずに大量の処理・作業に投下できるという選択肢は知っておいて損はない。
大量に処理しなくてはならないが、特に機密性はない、といった作業があったら、Contributor枠をAPIで呼び出し続けるスクリプトを作って、回しっぱなしにしておく、というのはかなり実用的だ。画像やPDF含めマルチモーダルに対応しているので、レシートのOCR処理と家計簿化など、実生活でも投下できるシーンがありそうだ。
各社の上位モデルは、主要ベンチマークを飽和しつつあり、ベンチマークのスコアだけを見ても、自分のユースケースに当該モデルが合致するかは、殆どわからなくなってきている。
Muse Spark 1.3のコーディング利用での実力を測るには、趣味の週末プロジェクトなどで、まとまったコーディングタスクがある時に、普段使っているClaude CodeやCodexを、Muse SparkのAPIで動かしてみて、その性能を体感してみるのが現実的なスタートラインだろう。
とはいえ、Claude CodeやCodexを普段利用しており、しかもMaxプランなど月額プランに加入していると、わざわざMetaのMuse Sparkや、次々登場する中国のオープンウェイトモデルを試す理由もなく、今使っているモデルを使い続けてしまいがちだ。
筆者も、Muse Sparkを好奇心から色々使ってみたものの、Claude Maxプランから乗り換えるほどの実用性はまだ感じていない。
MetaがAIモデル開発のトップ勢に復帰したことを喜びつつ、本格的にスイッチを検討できるレベルの次期モデルに引き続き期待しておきたい。