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GLM-5.3完全ガイド:Mythosに迫るサイバー能力、Claude Codeでの使い方

Published Aug 17, 2026
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2026年8月14日、中国のAI企業Z.aiが、最新の大規模言語モデル「GLM-5.3」を発表した

その最大の特徴は、ベースモデルはGLM-5.2と完全に同一で、事後学習のみで性能を改善した、という点だ。公式ブログの1文目も、“Scaling post-training is all we did for GLM-5.3.”(GLM-5.3でやったのは、後訓練のスケールだけだ)で始まっている。

にもかかわらず、長時間のターミナル作業能力を測るTerminal-Bench 3.0のスコアは4.6から28.3へと跳ね上がった。脆弱性発見ベンチマークのCyberGymでは84.5%を記録し、Z.aiの発表値ではAnthropicのMythos 5やGPT-5.6 Solすら上回っている。

ただし、2026年8月15日時点でGLM-5.3を使えるのは、月額約2,700円($18)からのサブスクリプション「GLM Coding Plan」経由のみだ。

従量課金の標準APIは「coming soon」のままで、モデルウェイトの公開も8月28日ごろが予定されている。

GLM-5.3は「AIの伸ばし方が変わりつつある」ことを示す技術的に重要なリリースだ。まだまだ利用可能な場面が限られるため未知数の部分も多いが、今わかっていることをまとめた。

GLM-5.3の概要

Z.aiは清華大学の研究グループTHUDMをルーツに2019年に創業した企業だ。GLM-4.5からわずか1年あまりで5回の主要リリースという猛烈なペースで開発を進めており、前世代までの詳細はGLM-5完全ガイドGLM-4.5完全ガイドで解説している。

時期出来事
2025年7月GLM-4.5(355B MoE、MITオープンウェイト)
2025年9月GLM-4.6(文脈128K→200K)
2026年2月GLM-5(744B MoEへ大型化、slime公開)
2026年6月GLM-5.2(1M文脈、IndexShare、MITウェイト)
2026年8月GLM-5.3(後訓練のみで強化、ウェイト未公開)

今回リリースされたGLM-5.3の基本スペックは以下のとおりである。数値は公式ドキュメントと公式ブログに基づく。

項目内容
開発元Z.ai(旧Zhipu AI)
発表日2026年8月14日
ベースモデルGLM-5.2と同一(約743BパラメータのMoE、アクティブ約40B)
コンテキスト長1M(100万)トークン
最大出力128Kトークン
モダリティテキスト入力・テキスト出力のみ

MoE(Mixture of Experts)とは、タスクに応じてモデル内の「専門家」ネットワークを切り替える仕組みである。

全体では約7,430億パラメータという巨大なサイズを持ちながら、1回の処理で実際に動く(アクティブな)パラメータは約400億に抑えられており、性能と処理の軽さを両立している。

また、画像入力には対応していない。Vision系はGLM-5VやGLM-4.6Vという別系列のモデルが担っており、GLM-5.3はコーディングとエージェント作業に特化したテキスト専用モデルである。

記事執筆現在(2026年8月15日)の入手経路は以下の通りだ。

現時点では、GLM Coding Planを契約し、Claude Codeなどのコーディングエージェントツールの中で使うしか利用法がない。

入手経路状況課金方式
GLM Coding Plan利用可能サブスク
従量課金の標準API「coming soon」従量課金(価格未公表)
オープンウェイト未公開(8月28日ごろ予定)他社のクラウドサービスなど

8月末にオープンウェイトが公開されれば、米国のクラウドホスティング企業も次々とGLM-5.3の提供を開始するであろうから、利用できる場所は大きく広がるだろう。

GLM-5.3のベンチマーク:Opusレベルの性能と高いトークン効率

主要ベンチマークの数値を見ていこう。以下はZ.aiが公式ブログで公表した比較表からの抜粋である(「何を測るか」の列は筆者による補足)。

GLM-5.3は、CyberGymをはじめ、AutomationBench・GDPval-AA v2の3つで、Fable 5やGPT-5.6 Solなどのフロンティアモデルさえ押さえて首位に立った。

ベンチマークGLM-5.3GLM-5.2競合トップ何を測るか
Terminal-Bench 3.028.34.6GPT-5.6 Sol 34.6ターミナル上の難関実務タスク74問。コーディング以外の仕事も含む新版
Terminal-Bench 2.188.281.0GPT-5.6 Sol 88.8同じくターミナル作業、コーディング中心の従来版
DeepSWE v1.166.946.2GPT-5.6 Sol 72.7学習データ汚染のない書き下ろしの長時間開発課題
SWE-Marathon v1.142.519.4Opus 4.8 48.8Cコンパイラ自作やSlackクローンなど、超大型タスク
CyberGym84.5%77.2%GLM-5.3が1位実在OSSの脆弱性を、ソースコードから見つけて再現
ExploitBench54.424.4Mythos 5 78.0見つけた脆弱性を、実際に動く攻撃コードへ仕上げる
AutomationBench v1.0.648.226.2GLM-5.3が1位複数SaaSをAPI経由でつなぐ業務ワークフローの完遂率
Agents’ Last Exam (CLI)28.523.8GPT-5.6 Sol 28.655業種の専門実務タスク(うちCLI部分を抽出した版)
Toolathlon Verified73.059.9Kimi K3 76.532アプリ・600超のツールをまたぐ、長い手順のツール操作
GDPval-AA v2(Elo)17691508GLM-5.3が1位44職種の実務成果物の質。人間の専門家が評価

それ以外の多くではGPT-5.6 SolやClaude Fable 5に次ぐ2番手グループではあるが、GLM-5.2との比較ではほぼ全項目で大幅な伸びを示しており、Kimi K3やDeepSeek-V4 Proといった中国勢のライバルを上回る項目も多い。

GLM-5.3・GLM-5.2・Kimi K3・Fable 5・GPT-5.6 Solの6ベンチマーク比較棒グラフ。Terminal Bench 3.0、DeepSWE、Agents' Last Exam、AutomationBench、HLE w/ Tools、GDPVal-AA v2のスコアが並ぶ

少なくともオープンウェイトモデルとしては、頭一つ抜けた存在と言える。

また、GLM-5.3の性能でもう一つ注目すべきは、トークン効率である。

コーディングエージェントは1タスクで何万トークンも出力するため、トークン効率はコストとレイテンシに直結する。エージェント運用者にとっては、ベンチマークの順位より実利のある数字かもしれない。

Z.aiの社内ベンチマーク「Z.ai Code Bench」では、1タスクあたりの出力トークン数が公表されている。

GLM-5.3は、GLM-5.2と比べスコアを大きく上げながら、出力トークンを約22%減らしている。high設定ではOpus 4.8を上回るスコアを、半分以下のトークン数で出している点も目を引く。

モデル(設定)スコア出力トークン/タスク
GLM-5.3(max)34.5%約75,000
GLM-5.3(high)31.4%約50,000
GLM-5.2(max)23.4%約96,000
Claude Opus 4.829.5%約120,000
Claude Fable 5(max)39.5%非公表

脆弱性の発見能力とセキュリティリスク

ソースコードから脆弱性を特定・検証する能力を測るCyberGymでは、GLM-5.3は84.5%で首位に立っている。

Anthropicが一部の企業のみに提供しているセキュリティ特化モデルMythos 5(83.8%)や、GPT-5.6 Sol(83.6%)を僅かに上回っており、目覚ましい性能だ。

ただし、発見した脆弱性から実際に攻撃を組み立てる能力を測るExploitBenchでは、GLM-5.3は54.4で、Mythos 5の78.0には及んでいない。

Z.aiは、安全性評価が完了してからウェイトを公開すると予告しており、セキュリティへの一定の配慮が見られる。

しかし、オープンウェイトモデルでは、Anthropicが危険なコードの出力を制御しているFable 5のような「提供企業によるコントロール」が効かなくなるため、高性能なサイバー攻撃能力を持つモデルが「野に放たれる」リスクは残る。

GLM-5.3の時点では、まだMythos 5ほどの脅威とは言えないかもしれないが、今後、オープンウェイトモデルの性能が高まり続ければ、この論点が注目を集めることになりそうだ。

「事前学習」と「事後学習」の違い

LLMのモデルトレーニングは、大きく2つの工程に分かれる。

1つ目が事前学習(pre-training)だ。書籍やインターネット上の文章など、膨大なテキストを読み込ませて、言語や知識の「基礎能力」を作る工程で、莫大な計算資源を消費する。LLM開発で最もコストがかかる部分だ。

2つ目が後訓練(post-training)だ。事前学習済みのモデルに対して、指示への応答の仕方を教える教師ありファインチューニング(SFT)や、試行錯誤から学ばせる強化学習(RL)を施し、実際に「使える」形に仕上げる。

フロンティアモデルの世界では「バージョン番号が上がる」ということは、一般的には「新しく事前学習し直したベースモデル」というのが一般的だった。

GLM-5.3は、コストのかかる事前学習には手を付けず、ポストトレーニングだけでベンチマークを大幅に改善したのである。

LLMについて、「モデルを大きくする」以外にも、まだまだ伸びしろが残っている可能性を示した形だ。

現時点の唯一の利用経路「GLM Coding Plan」の概要

先述の通り、現時点ではGLM-5.3を使用するには、公式が提供するGLM Coding Planに入るしかない。

GLM Coding Planの料金は以下のとおりだ(z.ai/subscribe、2026年8月15日時点)。

プラン月額週次クレジット
Lite約2,700円($18)10,000
Pro約12,000円($80)60,000
Max約25,200円($168)140,000

GLM Coding Planの料金ページ。Lite / Pro / Max の3プランが並び、年払い30%オフ適用時の月額$12.6 / $56 / $117.6と、割引前の$18 / $80 / $168が表示されている

上の料金ページは年払い(30%オフ)を選んだ状態の表示で、取り消し線の付いた$18 / $80 / $168が月払いの正規料金にあたる。年払いや四半期払い(20%オフ)を選べば、さらに安く使える。

なお、平日15時〜19時以外は、オフピーク割引がある。

ピーク時間の定義が「平日14:00〜18:00(中国標準時)」に限られており、それ以外の時間帯はすべてクレジット消費量が50%としてカウントされるのだ。

日本時間に直すと、通常レートで課金されるのは平日15:00〜19:00のみである。早朝・夜間・週末は、すべて半額レートで使える。

Coding Planは、Claude Code、Cline、OpenCode、Codex、Kilo Code、Roo Code、Goose、OpenClawなど20以上の公式サポート対象コーディングツール内で利用できる。自前アプリに組み込む用途には使えないので、汎用APIの代替にはならない。

Claude CodeでGLM-5.3を実際に使う方法

GLM Coding Planは、Anthropic互換・OpenAI互換の両プロトコルでエンドポイントを提供している。

ツールごとに接続先が異なるので、まず自分の使うツールに対応するBase URLを押さえておきたい(公式クイックスタートより)。以下では、Claude Codeでの実際の設定手順を紹介する。

まずは、Coding Planを契約したうえで、Individual Coding Plan > Plan OverviewからAPIキーを発行する。

次に、~/.claude/settings.jsonに接続情報を書く。

初めてGLMに接続する場合は、エンドポイントとAPIキーの指定が必要である。既存の設定ファイルがある場合は、ファイル全体を置き換えずにenvブロックへ追記・更新する。

{
"env": {
"ANTHROPIC_BASE_URL": "https://api.z.ai/api/anthropic",
"ANTHROPIC_AUTH_TOKEN": "your_zai_api_key",
"API_TIMEOUT_MS": "3000000",
"CLAUDE_CODE_AUTO_COMPACT_WINDOW": "1000000",
"ANTHROPIC_DEFAULT_HAIKU_MODEL": "glm-4.7",
"ANTHROPIC_DEFAULT_SONNET_MODEL": "glm-5.3[1m]",
"ANTHROPIC_DEFAULT_OPUS_MODEL": "glm-5.3[1m]"
}
}
  • ANTHROPIC_BASE_URL — 接続先をAnthropicからZ.aiのAnthropic互換エンドポイントへ向ける
  • ANTHROPIC_AUTH_TOKEN — 手順1で取得したZ.aiのAPIキー
  • API_TIMEOUT_MS — 長時間の推論でタイムアウトしないよう、公式は3,000,000ミリ秒(50分)を推奨している
  • ANTHROPIC_DEFAULT_*_MODEL — Claude CodeのOpus / Sonnet / Haikuの各スロットに割り当てるGLMモデル。軽量処理用のHaiku枠には安価なglm-4.7を当てるのが公式の推奨構成である
  • glm-5.3[1m][1m]サフィックス — 1Mトークン文脈を有効化する指定。あわせてCLAUDE_CODE_AUTO_COMPACT_WINDOW1000000にしないと、Claude Code側が手前で自動コンパクション(文脈の圧縮)を始めてしまう

設定後にclaudeを起動し、/statusコマンドで設定の読み込み元が~/.claude/settings.jsonになっていること、モデル欄がglm-5.3またはglm-5.3[1m]になっていることを確認する。

セッション中は/effortコマンドで思考の強度(low / high / max)を切り替えられる。既定値はmaxである。なお、Coding Planのアダプタ層はthinking: falsedisabledといった「思考オフ」の指定をlowに読み替える仕様で、思考を完全に切ることはできない。

米国モデルは安全規制が強すぎて、中国モデルが受け皿に

AIモデルの性能が向上するにつれて、脆弱性を突いた攻撃リスクなどへの対策が求められている。

その結果として、AnthropicやOpenAIなどの米国企業が提供するモデルは、危険な出力を予防するためのガードレールが非常に強く設定されている。

例えば、自分が開発・運営するアプリやウェブサイトの基本的な脆弱性について聞いただけでも、ガードレールが発動し、性能が落ちてしまう。防御者と攻撃者を区別できないため、セキュリティの質問には答えない、というのが唯一の解決法になってしまうためだ。

その結果、セキュリティ関連のタスクでは、米国のAIモデルは実用的ではなく、何の制限もない中国のオープンウェイトモデルの方が、セキュリティ用途では実力が上という、逆説的な状況が生じている。

象徴的なのは、2026年7月のHugging Faceへのハッキング事件だ。

ガードレールを意図的に下げたOpenAIのテストモデルがサンドボックスを脱出してHugging Faceの本番サーバを攻撃した際、Hugging FaceのML責任者は、米国モデルは使い物にならないので、GLM-5.2に切り替えて防御して事態を収拾したという

防御者と攻撃者を区別できない安全対策が、結果的に中国モデルの追い風になっているのだ。

Mythos級AIがオープンウェイトで野に放たれる日は近い

GLM-5.3はCyberGymなど3つのベンチマークで首位に立ったものの、多くの項目ではFable 5やGPT-5.6 Solに次ぐ2番手にとどまる。最上位の性能が要る難タスクや、画像を扱う作業は、依然としてClaude・GPT系に分がある。

それでも十分に魅力的なのは、価格である。月額約2,700円($18)から始められ、平日15時〜19時以外はクレジット消費が半分になる。長時間のエージェントタスクを毎日回し続ける使い方でも、コストを気にせずに済む水準だ。

最高性能まではいらないが、コーディングの量が多い人は、一度試してみてほしい。Claude Codeなら~/.claude/settings.jsonenvブロックを数行書き換えるだけで、いつもの操作感のまま中身をGLM-5.3に差し替えられる。

セキュリティエンジニアのように、ガードレールの強い米国モデルが実務で使い物にならない職種にとっても、GLM-5.3は現実的な受け皿になる。

一方で、Mythos級のサイバー能力を持つモデルが、オープンウェイトで公開される日は着実に近づいている。GLM-5.3の脆弱性発見能力は、すでにAnthropicのMythos 5と並んでいる。

そして、一度公開されたウェイトは、誰がどう使うかを開発元が一切制御できない。Z.aiは安全性評価の完了後にウェイトを公開すると予告しているが、公開後にできることは何もないのだ。

防御側が同じ性能のモデルを同じスピードで使えるかどうかが、これからの分岐点になるのだろう。

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