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「NotebookLM」は、Googleが提供する革新的なAIノートアプリだ。
本、論文、スライド、ニュース、議事録などのあらゆるドキュメントを、AIの「知識源(ソース)」としてアップロードすることができ、それらのソースに基づくAIとの対話が可能だ。
例えば、AIが読書中の本に関するQ&Aに答えてくれたり、英語の論文PDFの要約してくれたり、大学の講義資料から中間試験の予想問題を作ってくれたり、まるで自分専用の秘書・家庭教師のように使える。
NotebookLMは、当初は実験的アプリとして公開されたものだが、その後どんどん機能が強化されてきた。現在では最新のAIモデル「Gemini 2.0 Flash」が搭載され、さらに要約や回答の精度が向上している。
無料でも利用できるのが嬉しいポイントだが、ファイルアップロード数や利用回数の制限を大幅に緩和する有料版「NotebookLM Plus」も用意されている。
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2025年2月から、2TBのGoogleドライブやGemini Advancedを利用できる「Google One AI Premiumプラン」の中に、新たに「NotebookLM Plus」も含まれることとなり、Google Oneさえ契約すれば(月2,900円)、追加料金なしで利用できるようになった。
競合のChatGPTやClaudeと比べても、コスパが非常に高いサービスになったと言えるだろう。
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本記事では、NotebookLMの使い方・基本操作をはじめ、NotebookLM Plusのメリット、NotebookLMの具体的な活用例、最新の「音声概要」機能を試したサンプルなど、NotebookLMの魅力をまとめて紹介する。
本記事を参考に、NotebookLMを使いこなし、読書、勉強、仕事の生産性を向上させてほしい。
NotebookLMの基本的な使い方
NotebookLMは、AIを活用したリサーチ支援ツールとして設計されている。
大量の文書をアップロードしても、その内容を理解したAIが、要約や重要ポイントの抽出を瞬時に行なってくれるので、情報収集を圧倒的に高速化できる。
また、アップロードした情報に基づくチャットが可能なので、質疑応答を繰り返すことで、気になる点だけ効率的に理解を深めることもできる。
NotebookLMを使用するには、まずは公式ページにアクセスする。Googleアカウントを持ってさえいれば、誰でも利用できる。
NotebookLMを開くと、最初に「マイノートブック」として作成したノートの一覧を管理する画面になる。
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「ノートブック」単位でAIの情報源となる「ソース」をアップロードしていくことになるので、関係のないインプットが混ざらないよう、作業ごとにノートブックは分けた方が良い。
それぞれの「ノートブック」を開くと、「ソース」「チャット」「Studio」の3つのパネルが表示される。
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NotebookLMを使用する際の基本的な流れは、次のようになる。
- 「ソース」にPDF、スライド、ドキュメント、URLなどをアップロードして、AIの知識源を作る。自動的にソース全体を要約した結果が表示される。
- 「チャット」 で、ソースに関する質問をして、理解を深める。
- 「スタジオ」で、ソースに基づくアウトプット(音声サマリー、4種類のテンプレ文書)をワンクリックで生成し、「メモ」として保存する
以下では、上記1〜3のステップに分けて、詳しく使い方を紹介していく。
「ソース」で文書のアップロードと分析をする
ユーザーが自分の持つ資料をNotebookLMにアップロードすると、NotebookLMに組み込まれたAIモデル「Gemini 2.0 Flash」が、その内容を理解・分析してくれる。
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対応しているアップロード形式は、PDF、テキスト(.txtやMarkdown)、音声ファイルなど多岐にわたる。ウェブページのURLを渡すことで、Webの情報を読み込ませることもできる。
Googleのサービスだけあって、Googleドライブ上のGoogleドキュメントやスライド、YouTube動画のリンクも直接取り込むことが可能である 。
例えば、学術論文をアップロードしてみると、即座にそれらを要約したサマリーが画面中央に表示される。
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調べ物をしているときに、Web上で見つけた記事や動画、学術論文などを片っ端から突っ込んでいくだけで、その分野の豊富な知識を持つ自分だけのAIが完成してしまう。
NotebookLMでは、ユーザーがアップロードした情報のみを参照して、AIが回答や要約を生成するため、信頼性の高い結果を得られるのが特徴だ。
通常のChatGPTやGeminiに搭載されている「検索」機能だと、インターネット上の情報を参照してAIが回答してくれはするものの、信頼性の低いサイトなどを参照してイマイチな回答が返ってくることも多い。
その点、NotebookLMであれば、自分で情報源をコントロールできるので、自分の情報収集能力を拡張した延長上にあるAIアシスタント、という使い方ができる。
「チャット」でソースに関する質問をする
ソースがアップロードできたら、画面中央のチャットで、Gemini 2.0 Flashとの会話をしてみよう。
使い心地は、通常のGeminiやChatGPTなどのチャットボットと全く同じだ。質問をすると、ソースの内容に基づいてGemini 2.0 Flashが回答を生成してくれる。
例えば「このレポートの結論は何ですか?」「著者が提案する解決策を箇条書きで教えて」などと尋ねると、アップロード資料の内容に即した回答が返ってくる。
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回答には、どのソースから引用した情報であるかが明示されているため、気になる記述があれば元文書の該当箇所を目視で確認することもできる。
ソースの内容を的確に理解して、気になる点だけに回答してくれるため、ドキュメントを読むスピードが飛躍的に向上する。
そして、こうして生成されたAIからの回答は、「メモ」として保存することができる。
回答の末尾に「メモに保存」というボタンがあり、これをクリックすると「Studio」パネルのメモ欄に記録される。
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ちなみに、もし生成される回答が詳しすぎる/浅すぎると感じたら、チャットの「設定」から、文体やスタイルをカスタマイズすることも可能となっている。
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例えば、仕事でリサーチを進めている場合など、質問に対してできるだけ情報量多めに回答して欲しい場合には、会話のスタイルを「アナリスト」とし、また回答を「長め」に変更するなどすると良いだろう。
「Studio」で自動要約コンテンツ&ユーザーノートを作成
「チャット」パネルでは、AIに対する質問を自分で考える必要があるので、プロンプトの技術がある程度必要になる。
その点、「Studio」パネルには、あらかじめ用意されたクイック要約機能がついており、以下の4種類のテキストをワンクリックで生成することができる。
- 学習ガイド
- ブリーフィング・ドキュメント
- よくある質問
- タイムライン
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チャットを使う場合よりも、あらかじめGoogle公式によって定義されたプロンプトに基づいて、Geminiが構造化したアウトプットを出してくれるので、プロンプトを考える手間なく優れた要約が手に入る。
これらのボタンから生成したテキストは、自動的に「メモ」に保存されるので、後から何度でも参照できる。
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また、「Studio」パネルでは、ユーザー自身が「メモ」を執筆することも可能だ。
通常のノートアプリのように、テキストを手打ちして保存することができる。Gmailのようなインターフェースで、太字・斜字、箇条書きなどの機能も実装されており使いやすい。
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ユーザー入力や生成結果の「ソース」化
メモで表示した内容は、「ソースに変換」ボタンで、ソースとして追加することもできる。
「チャット」や「Studio」パネルで、AIと共同で作成した要約などのテキストを、再びソースに足していくことによって、AIの知識源がどんどん整理され充実していく。
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また、ユーザー自身によるメモもソースにすることができるため、NotebookLMを使いながらまとめた考えや、大学の講義中に書いたメモなどを、AIに読み込ませることができる。
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NotebookLMでは、AIとユーザーとのコラボレーションで、ソース→チャット→メモを行き来しながら情報源・知識源を充実させていき、さらに的確なアウトプットが得られるようになる、という独特のフィードバックループが機能する。
NotebookLMは、Googleドライブと同様の感覚で、他のユーザーとノートブックを共有することもできる。
チームでプロジェクト資料をアップロードしたり、同じ講義をとっている学生同士で授業の資料を共有したり、様々な使い道が考えられる。
AIの助けを借りながら、人間が新しい知識を生み出していく近未来が感じられる。
「音声概要」機能でなんでもポッドキャストに
NotebookLMの最もユニークで革新的な機能が、ソースの内容を音声で要約・解説してくれる「オーディオオーバービュー(音声概要)」機能だろう。
これは、単にテキストを読み上げるのではなく、AIが2人のナレーター役を演じて、対話形式で資料内容を議論・説明してくれる機能だ。
まるでラジオやポッドキャストを聴いているかのように楽しみながら、ソースにアップロードした文献の内容を「聴く」ことができる。
音声による要約は、「Studio」パネルで、他のクイック要約機能などと同様にワンクリックで生成できる。
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生成される音声は15分ほどだ。
実際に試してみると、まるで人間のパーソナリティが会話をしているようなラジオ番組がものの1分くらいで生成されて、本当に驚かされる。
記事執筆現在、残念ながら英語にしか対応していないが、実際に生成された「ポッドキャスト」の冒頭を紹介する。
アップロードしたソースは、非常に難解な学術論文も含む海洋環境やプラスチック分解に関するPDFファイルだ。
男女のパーソナリティが、自然な会話のキャッチボールを繰り広げながら、アップロードした学術論文の内容をサマリーしてくれているのが分かるだろう。
Male: Hey everyone, welcome back to the Deep Dive. Um, today we’re going to be talking about something that I know you guys are really interested in and that’s the impact of plastic pollution on marine life.
Female: Yeah, it’s, it’s a big one and, and there’s a lot to unpack.
Male: Yeah, we’ve got kind of a mix of sources for this one. We’ve got scientific papers, policy reviews, even a learning guide, just to kinda give us some background and context and I think our goal today really is to give you guys like a really good understanding of just how big this problem is and what some of the potential solutions are.
Female: Yeah, and I think what’s cool about this Deep Dive is that it really brings together all these different perspectives. Like we’ve got the hard science, but then we also have the policy recommendations and even like ways to raise public awareness. So it really highlights that this isn’t just like an environmental issue. It’s like a whole societal challenge and it needs like a multi-pronged approach. Right, right.
Male: For sure, for sure. Okay, so let’s jump right in. So, first things first, I think we gotta wrap our heads around just the scale of this problem, right?
Female: Like picture like the vastness of our oceans, teeming with life, and now imagine this: Every single year, like a mind-blowing 300 million tons of plastic waste ends up in this precious ecosystem.
Male: It’s crazy.
Female: It’s crazy. And here’s the kicker, like 75% of it comes from land-based sources.
Male: Wow.
日本語に訳すと以下のような感じだ。
男性:はい、みなさんこんにちは!Deep Diveへようこそ。えー、今日は皆さんの関心が高いテーマ、海洋生物に対するプラスチック汚染の影響について話していきたいと思います。
女性:そうですね。これ、本当に大きな問題で、掘り下げるべきポイントがたくさんありますよね。
男性:今回は色んな情報源を使っていて、科学論文や政策レビュー、さらには学習ガイドなんかも参考にしました。背景や文脈をしっかり押さえた上で、この問題の深刻さと、考えられる解決策について、みなさんに分かりやすく伝えていきたいと思います。
女性:今回のDeep Diveのいいところは、様々な視点を組み合わせているところだと思うんです。純粋な科学的な面もあれば、政策提言や、一般の認知度を上げる方法なんかも含まれていて。つまり、これって単なる環境問題じゃなくて、社会全体の課題で、多角的なアプローチが必要なんですよね。
男性:その通り、その通り。じゃあ、さっそく本題に入っていきましょうか。まず最初に、この問題の規模感を理解する必要がありますよね。
女性:こう想像してみてください。生命にあふれる広大な海。そこに毎年、なんと3億トンものプラスチックごみが流れ込んでいるんです。
男性:信じられないですね。
女性:本当にそうです。しかも驚くべきことに、その75%が陸上から来ているんですよ。
男性:うわー。
アップロードした学術論文の内容に的確に触れながら、興味をそそるような導入までしてくれる。冒頭のやり取りの後も、資料の詳細に踏み込んで、各論文が示している重要なデータ等について音声で解説してくれている。
この機能を活用すれば、AIの補助の元で、大量の資料をわざわざ自分で読まずとも、瞬時に概要を噛み砕いて把握する、なんてこともできてしまう。
リサーチした資料を片っ端からNotebookLMに突っ込んでおいて、「音声概要」を生成し、通勤時間に資料の内容を「聴いて」インプットするといった活用も可能だ。
しかも、驚くべきことに、このポッドキャストにはユーザー自身が「参加」することもできる。ラジオ番組の途中で質問を差し込んで、パーソナリティがその質問に答えてくれたりするのだ。
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資料をアップロードすると勝手にラジオ番組ができて、そこに自分が参加して発言することができる・・・あまりにも未来の技術すぎるではないか。
NotebookLMの活用例&活用アイディア
NotebookLMは、非常に高機能であるため、私生活からビジネス、研究まで、あらゆる用途で役立つことが考えられる。
一方で、あまりに高機能すぎて、何から使えばいいのか、という感想を持つ人もいるかもしれない。
ここでは、最大限に活用するために、各場面でNotebookLMによって効率化できそうな用途を考えてみた。
ビジネス:リサーチ、ブレスト相手、投資アドバイザー
ビジネスシーンでも、NotebookLMは大いに活躍してくれるだろう。
例えば、企業の年次報告書や市場調査レポートなどをアップロードすれば、重要な指標や要点を自動で抜き出して、瞬時にパワポに落とし込むサマリーが入手できる。
日頃からMTGをAIで文字起こししておいて、NotebookLMにプロジェクト毎にノートブックを作り、すべてのMTG履歴をアップロードしておけば、「過去のMTGの内容を全て記憶しているスーパーアシスタント」が爆誕する。
議事録やプロジェクト資料をアップロードしたノートブックで、「次回のMTGのアジェンダを作成して」などとGeminiに指示すると、かなり精度の高いアジェンダが自動で生成できるので、本当にオススメだ。
また、ブレインストーミングの場面では、プロジェクト関連の市場調査レポートや、過去作成してきたPJ資料をまとめて投入し、「この情報から新規アイデアをいくつか提案して」などと質問することで、思わぬ発想が得られるかもしれない。
日常生活:読書、動画の要約、あらゆる言語の翻訳
大量の情報を、効率的に処理することができるNotebookLMを活用することで、様々な時短が可能になる。
本を読むにあたって、KindleやPDFの形で電子データを入手できれば、それをアップロードすることで、その本の重要なポイントをかいつまんで把握したり、分かりにくかったポイントをAIに解説してもらったりすることができる。
また、NotebookLMは、テキストコンテンツだけでなく、YouTubeの長尺動画講義やインタビュー動画なども、リンクURLを与えるだけで内容をテキスト化し要約できる。
「動画を見る時間はないが内容を知りたい」という場合に非常に便利だ。イベントやシンポジウム、講演会などに参加する時間がなくても、YouTubeリンクさえ手に入れば内容を把握できる。
個人で使う場合に、英語はもちろんのこと、あらゆる外国語の資料を、日本語で読むことができるのも大きなメリットだろう。
海外旅行に行く前に、海外YouTuberのVlog動画をNotebookLMに読み込ませ、オススメスポットをAIにサマリーしてもらうなんてことも可能だ。
英語が得意な人ならば、自力でも可能かもしれないが、それが中国語、フランス語、ドイツ語、などなどあらゆる言語で可能となると、かなり革命的だ。
勉強・研究:資料要約、試験の予想問題
学生や研究者、あるいは資格勉強中の社会人にとって、NotebookLMは強力な学習パートナーとなる。
教科書や論文、講義ノートをアップロードすれば、難解な内容でも噛み砕いた要約ノートを、瞬時に自動で生成できてしまう。
例えば、長い学術論文を読み込ませて「要点をまとめて」と指示すると、主要な結論やデータを簡潔にリスト化してくれる。
生成された要約には、原文中の該当箇所へのリンクが付与されているため、レポート作成時などに引用が必要な場合も、ワンクリックで原典を確認できる。
通常のChatGPTやGeminiでは、ソースが不確かな記述が多く、大学のレポートなどで使うのはリスキーだ。NotebookLMでは、必ず原典が明示されるので、情報の正確さや一次資料の確認が求められるアカデミックなシーンでも非常に有用だ。
NotebookLMに、授業スライドや参考書をアップロードして、自習用のQ&Aを行うこともできる。資格試験や定期試験前の総復習など、学習効率を高める様々なシーンで、大いに活躍するだろう。