意外と知られていないが、ボールペンによっては、メーカーやブランドを超えた互換性があるのをご存知だろうか。
ボールペンの替芯(リフィル)には、数種類の国際規格が存在し、同一の規格を持っているボールペン同士であれば、互いに替芯を使うことができる。
例えば、自分のお気に入りのPILOTのボールペンで、書きやすいことで有名な三菱鉛筆のジェットストリームインクを使用する、なんてことができてしまう。
本記事では、数ある国際規格の中でも、多色・多機能ボールペンで最もよく使われている「D1規格」をまとめる(日本国内では4C規格とも言われる)。
D1規格に対応したオススメのボールペン本体を18種類、またそれらのペンで使用できる各メーカーのD1替芯(リフィル)を、分かりやすい表に整理した。
ちなみに、単色の高級ボールペンに使われることの多い「G2規格」については、以下の記事でまとめているので、そちらも参考にして欲しい。
ボールペンのD1規格(4C規格)とは?
D1規格は、3色ボールペンなどの多色・多機能ペンや、小型のペン用に開発された国際規格である。
替芯(リフィル)も非常にコンパクトなので、4色ボールペン+シャーペンなど、多数の機能が備わった製品が多い。
携帯性に優れており、仕事で複数の色のペンが必要になることの多い人にとっては、非常に便利な規格だ。
日本国内だけでなく、海外でも、多数のブランドによって採用されており、選択できるブランドのバリエーションも豊富だ。
例えば、最も有名なD1規格の高級ボールペンといえば、ドイツの筆記具ブランドLAMYの名品、「LAMY 2000」であろう。
1966年に発売されたボールペンだが、今日においても全く色褪せない素晴らしいデザインの一品だ。
LAMY 2000を購入すると、もちろんLAMY社のオリジナルのインクリフィルが入っているわけだが、海外ブランドのボールペンは太字で、漢字が多い日本語の筆記にはかなり使いにくい。
そんな時でも、「D1規格」の互換性を活かして、日本人が使いやすいジェットストリームインクなどのリフィルを入れることで、見た目も、使い心地も最高なマイボールペンを作れるのがD1規格の魅力だ。
なお、日本では、「D1規格」と非常によく似たゼブラの独自規格である「4C規格」があり、4Cという呼び方の方が広く知られているかもしれない。
4CとD1はほぼ互換性があるが、4C替芯の方がほんの少し径が太いため、本来は、D1規格同士を使うことが推奨される。
D1規格(4C規格)に対応したボールペン本体まとめ
日本国内で入手できる主要なD1規格のボールペンの一覧は以下の通りだ。文房具各社から、多数の互換ペンが発売されていることが分かる。
表に記載したインク色は、デフォルトで入っているリフィルの色なので、購入した後から別のリフィルを入れれば、好みの色に変えることも可能だ。
基本的に、ほとんどのモデルが多色ボールペンで、2〜4色のボールペンと、シャーペンを組み合わせた多機能ペンばかりだ。
メーカー | ブランド | 軸 |
---|---|---|
三菱鉛筆 | ジェットストリーム プライム 2&1 | 多色ボールペン黒・赤 +シャーペン0.5 |
三菱鉛筆 | ジェットストリーム プライム 3色 | 多色ボールペン黒・赤・青 |
三菱鉛筆 | ピュアモルトプレミアム (2&1, 3&1, 4&1) | 多色ボールペン2〜4色 +シャーペン0.5 |
PILOT | 2+1レグノ | 多色ボールペン黒・赤 +シャーペン0.5 |
PILOT | 2+1エボルト | 多色ボールペン黒・赤 +シャーペン0.5 |
PILOT | 2+1アクロドライブ | 多色ボールペン黒・赤 +シャーペン0.5 |
PILOT | リッジ (2+1, 3+1, 4+1) | 多色ボールペン2〜4色 +シャーペン0.5 |
トンボ | ZOOM L105 | 単色ボールペン |
トンボ | ZOOM 707 | 単色ボールペン |
OHTO | ブルーム 3 in 1 | 多色ボールペン黒・赤 +シャーペン0.5 |
OHTO | マルチB 2+1 | 多色ボールペン黒・赤 +シャーペン0.5 |
ぺんてる | ビクーニャEX1シリーズ | 多色ボールペン黒・赤 +シャーペン0.5 |
プラチナ万年筆 | PNOVA | 多色ボールペン黒・赤 +シャーペン0.5 |
セーラー万年筆 | プロフィット 3, 4 | 多色ボールペン黒・赤(・青) +シャーペン0.5 |
セーラー万年筆 | メタリノ4 | 多色ボールペン黒・赤・青 +シャーペン0.5 |
LAMY | LAMY 2000 4色ボールペン | 多色ボールペン黒・赤・青・緑 |
CROSS | Tech 3, 4 | 多色ボールペン黒・赤(・青) +シャーペン0.5 |
銀座伊東屋 | ロメオ多機能ペン 4 in 1 | 多色ボールペン黒・赤・青 +シャーペン0.5 |
沢山ある上に、どれも価格帯は2〜3千円程度なので、迷ってしまう人も多いはず。
上の表から、高級感やオシャレさ、また機能性など、いくつかの観点から、筆者のオススメのD1企画ボールペンをピックアップしてみよう。
替芯を使う最大のメリットは、お気に入りのボールペンをほぼ永久に使い続けることができる点にある。せっかく長く大切にするなら、本体の高級感やデザイン性はとても大切だ。
典型的な「高級ボールペン」はLAMY 2000や銀座伊東屋ロメオであろうが、これらは7千円〜8千円程度と、ペン一本にしては中々高額だ。
お手頃価格でありながら、高級感のあるボディとして、プラチナ万年筆の「PNOVA」はオススメだ。
オール金属の高級感のある本体デザインにも関わらず、1000円台の驚きのコストパフォーマンスを誇っている。
また、金属製ではなく、木製の高級感のあるボディが欲しいならば、有力候補として三菱鉛筆「ピュアモルトプレミアム」と、PILOTの「2+1レグノ」が挙げられる。
また、変わり種として、トンボが発売している「ZOOM 707」は、D1規格替芯のコンパクトさを活かした極細の単色ボールペンで、とても特徴的なフォルムをしている。
1987年に発売され、数々の国際デザイン賞を受賞した名作だ。ボールペン好きであれば、ぜひ持っておきたい一本である。
D1規格(4C規格)の替芯(リフィル)まとめ
D1規格のリフィルは、世界的に使われている規格であるため、SCHMIDTなど海外のメーカーによる超ロングセラーの商品もある。
国内でも、三菱鉛筆のジェットストリームなど、鉄板のブランドがD1規格のリフィルも発売しているのでありがたい。
ボールペンのインクは、主に油性、ゲル、エマルジョンの3種類に分類される。
以下では、D1規格に対応したボールペンの替芯(リフィル)を、油性、ゲル、エマルジョンの順に紹介していく。
ただし、D1規格のリフィルは、ゲルインクなどの選択肢はほとんどなく、油性ボールが中心となっている。
D1規格(4C規格)の油性ボール替芯
油性インクは、最も一般的なタイプで、その名の通り油性で水分に強く、また乾燥も速いため、にじみが少ない。
ゲルインクなどと比較した際のデメリットとして、粘度が高いため、筆圧をかける必要があると言われている。
ただし、最近では三菱鉛筆のジェットストリームインクや、PILOTのアクロインキなど、油性でありながらかなりなめらかな書き心地を実現した新世代インクが登場している。
メーカー | ブランド | 型番 | バリエーション |
---|---|---|---|
三菱鉛筆 | ジェットストリーム | SXR-200-xx | カラー:黒、赤、青 ボール径:0.5, 0.7 |
PILOT | アクロインキ | BRFS-10EF-x BRFS-10F-x | カラー:黒、赤、青 ボール径:0.5, 0.7 |
トンボ | ー | BR-VS | カラー:黒、赤 ボール径:0.7 |
トンボ | ー | BR-VLE33 | カラー:黒 ボール径:0.5 |
OHTO | ー | R-4C5NP R-4C7NP | カラー:黒、赤、青 ボール径:0.5, 0.7 |
ぺんてる | ビクーニャ | XKBXES5/7 | カラー:黒、赤 ボール径:0.5, 0.7 |
SCHMIDT | ー | SC-REF635M-xx | カラー:黒、赤 ボール径:M(中) |
プラチナ万年筆 | ー | SBSP-150S | カラー:黒、赤 ボール径:0.5, 0.7 |
セーラー万年筆 | ー | 18-0103-xxx | カラー:黒、赤、青 ボール径:0.5, 0.7, 1.0 |
LAMY | ー | LM21xx | カラー:黒、赤、青、緑 ボール径:0.7 |
ゼブラ(独自規格=4C) | 4C-0.7芯 4C-1.0芯 | BR-8A-4C R4C10 | カラー:黒、赤、青、緑 ボール径:0.5, 0.7 |
筆者のおすすめは、油性ボールペンとは思えないサラサラとした書き心地の三菱鉛筆のジェットストリームシリーズだ。
PILOTやプラチナ万年筆の他社製のボールペン本体に、ジェットストリームのリフィルを使用することで、筆記の快適さと、本体デザインの魅力を両方楽しむことができて嬉しい。
D1規格(4C規格)のゲルインク替芯
ゲルインクは、水性インクに粉末状の顔料を混合したもので、油性インクと比較して粘度が低く、なめらかな書き味となっている。
ただしデメリットとして、乾燥時間が比較的長く、にじみやすい傾向がある。
D1規格では選択肢が見つからず、どうしてもゲルインクが使いたい場合は、ゼブラの4C規格のリフィルを無理やり使うしかない。
ちなみに、かつてはPILOTから「ハイテックC スリムス」という現在は終売しているゲルインクのD1規格ボールペンが発売されていた。
筆者は非常に気に入って使っていたので、販売終了はかなり痛手である。
D1規格(4C規格)のエマルジョンインク替芯
エマルジョンインクは、油性インクの次世代型として開発されたものだ。
油性インクと水性インクを混合して作られており、油性インクの利点を保ちつつ、よりなめらかな書き心地が味わえる。
ただし、エマルジョンについてもD1規格のリフィルでは選択肢がない。
唯一、独自規格4Cのゼブラから登場しているのみである。
互換リフィルで自分だけの多色ボールペンを作ろう
本記事で紹介したように、D1規格(4C規格)に対応したボールペンの本体と、D1規格のリフィルを組み合わせれば、理想のボールペンを作ることができる。
ジェットストリーム、アクロインキなど、お気に入りのボールペンのシリーズがあるのであれば、高級感のある多機能ボールペンの本体を買ってきて、見た目にも拘ってみてはどうだろう。
ボールペン本体のバリエーションも豊富なので、予算に応じて、自分好みのボールペンを選ぶことができる。
プレゼントやギフトとしてはLAMY 2000や伊東屋ロメオなどの高級ラインを、営業の仕事などで少し良いものを揃えたい人は2〜3千円で購入できるピュアモルトやレグノなどの木製軸のペンを買ってみれば、文字を書くときのテンションも上がるはず。
100円〜200円の使い捨てボールペンばかり使っている人は、少しだけ奮発して、1,000円台で手に入るプラチナ万年筆のPNOVAなどで、少し大人なボールペンの世界に入門してみよう。
本記事を参考に、D1規格ボールペンの魅力を体感してみてほしい。