ChatGPTを開発するOpenAIは、クリスマスまでの平日毎日、新機能や新製品をライブ配信で発表する「12 Days of OpenAI」を実施中である。
7日目の今日は、ChatGPT内で「プロジェクト」を作成・管理できる新機能がリリースされた。
早速、ChatGPTの有料プランであるPlus, Pro, Teamsのいずれかのユーザーは、プロジェクト機能を利用できるようになっている。
プロジェクトでは、文書・PDF・画像・コードなど、様々なドキュメントをアップロードして、その内容を参照したチャットスレッドを1箇所に集めることができる。
- Webサイトのテンプレートをアップロードして、ChatGPTに自分のWebサイトを作らせる
- 過去のミーティングの書き起こしをすべてアップロードして、サマリーや次回MTGのアジェンダを作らせる
- 電子書籍をアップロードして、読書の補助をしてもらう
などなど、様々な応用が可能で、私生活だけでなく、会社やチームでの作業の生産性の向上にも貢献してくれそうだ。
本記事では、12 Days of OpenAIのライブ配信中で紹介された使用例も含め、ChatGTPの「プロジェクト」機能の概要を紹介する。
なお、他の12日間の発表内容の総まとめ・解説記事は、こちらのタグ「12 Days of OpenAI」から確認することができる。日本時間の火曜〜土曜の午前3時にライブ配信が行われるので、次回以降の解説もお楽しみに。
新機能「プロジェクト(Projects)」とは?
今日から、課金ユーザーは、ChatGPT内で「プロジェクト」を作成・管理できるようになった。
これにより、チャット履歴やアップロードしたファイル、カスタム指示(プロジェクト固有の挙動を制御)を1箇所にまとめて扱うことが可能になる。
プロジェクト機能の概要
サイドバーに「Projects」というセクションが現れているので、「+」ボタンを押して、新規プロジェクトを作成することができる。
プロジェクトに名前をつけて、「Create」ボタンをクリックするだけだ。
プロジェクトには、複数のチャット履歴を紐つけて、フォルダのように管理することができる。プロジェクトの色などを設定できるので、チャット履歴の整理整頓のためにも純粋に使える。
プロジェクトでは、カスタムインストラクションを設定することができ、プロジェクト内のチャットに共通の指示を与えることができる。
例えば、クリスマスパーティー企画のプロジェクトでは、「常にサンタ口調で話せ」という指示を与えると、チャットがサンタ風になる。
また、プロジェクトごとにファイルをアップロードして保管できる。
プロジェクトに関連する文書、データ、画像、コードファイルなどをプロジェクトに紐付けておくことで、その内容を参照したチャットが可能になる。
例えば、ギフトのアイディアをまとめたスプレッドシートをアップロードしておいて、
チャットで、「たかし君宛のプレゼントはなんだっけ」と聞くと、ファイルの内容を参照して回答してくれる。
こうして作成したチャット履歴は、プロジェクトの下に連なっていく形で整理される。
また、過去のプロジェクト外で作成されたチャットを、左サイドバーでドラッグ&ドロップすると、プロジェクト内に移動させることも可能だ。
また、プロジェクト機能には、ChatGPTで利用できるCanvas機能や、Web検索機能も組み込まれているので、プロジェクト内でドキュメントやコードのAIとの共同編集を行うことも可能である、
議事録から読書サポートまで、無限の可能性
ファイルの読み込み、カスタム指示、チャット履歴の蓄積というプロジェクトの主要機能をうまく使えば、私生活から仕事まで、さまざな応用が考えられる。
同様の機能が、Anthropicの開発するClaudeのProjects機能や、Googleの開発するNotebookLMですでに利用可能であったので、筆者がこれまで実際に使ってきた中で、便利だった応用例を紹介する。
チーム専属の秘書としてChatGPTを使う
例えば、チームのMTG記録を全てアップロードしておけば、過去のMTGでどんな議論が行われたかを、AIが抽出して要約してくれる。
また、過去のMTGメモをみながら、次回のMTGで議論が必要なアジェンダなどを考案させることも可能だ。
実際、筆者もClaudeのProjects機能を使って、このような使い方をしてきたが、新卒の社員に議事録やアジェンダを考案させるよりも、ずっとクオリティの高いドキュメントが瞬時に完成する。
MTGを録音した音声ファイルさえあれば、当サイトで紹介している方法を使ってGeminiなどで簡単に書き起こしが可能なので、それらのテキストファイルを全てChatGPTのプロジェクトに突っ込んでおけばいいだけだ。
MTG中にチームメンバーの間で思い出せないことがあった時に、ChatGPTアシスタントに質問をしたり、本当に未来を感じる。
勉強や読書のサポートとしてChatGPTを使う
PDF形式の電子書籍ファイルや、KindleやEPUBなどをテキストやPDFに変換した電子書籍のファイルが手元にあれば、それらをファイルとしてChatGPTプロジェクトにアップロードすれば、書籍の内容に関する質問も可能になる。
また、研究プロジェクトを行う際にも、学術論文のPDFファイルを全てChatGPTにアップロードしておきさえすれば、「このファクトが載っているのはどの論文?」的な質問にもChatGPTが回答してくれるようになる。
筆者は、PDF形式で電子書籍を販売してくれている技術評論社のファンで、プログラミングの書籍などをPDFで所有している。
また、筆者は大量の紙の書籍を、全て自宅で裁断&スキャンして、PDF化する熱狂的な電子書籍ファンでもあるので、大量のPDF本を所有している。
これらを、ChatGPTのプロジェクトにアップロードして、書籍の内容に関する質問をしてみると、本の内容に基づいて回答してくれる。
例えば、Javascriptの書籍をアップロードして、思い出せない機能(e.g. Javascriptのゲッター・セッターって何だっけ?)について質問してみると、改めて解説してくれるとともに、書籍のどの部分に該当情報が載っているかを紹介してくれた。
読書のアシスタントとして、あるいは自分専属の家庭教師として、何度でも質問ができるChatGPTの存在は、非常に心強い。
OpenAIの公式ライブ配信でのデモ
OpenAIの「12 Days of OpenAI」の7日目の配信では、OpenAIのスタッフが、プロジェクト機能のデモンストレーションとして、いくつかのプレジェクト例を示した。
ここでは、プロジェクト機能で実現できることのイメージを掴むため、それらのデモの内容を簡単に要約する。
デモ1:プレゼント交換の企画や抽選の実行
友人・家族から欲しいギフトのアンケートを取って、アンケート結果を踏まえ、誰が誰にプレゼントを贈るかを決める、というデモが行われた。
プロジェクト内に、参加者アンケートの結果(Excelファイル)、ギフトの予算やルール(Wordファイル)、パーティーの開催情報(テキストファイル)などの必要な情報をアップロードする。
また、カスタムインストラクションとして、「あなたはサンタの工房の主任エルフとして…」「フェスティブなトーンで話す」など、世界観に合わせた指示をプロジェクト固有の設定として記述している。
そして、プロジェクト内のチャットで、先ほどアップロードしたアンケートの結果を表示するように指示したり、誰が誰にプレゼントを贈るかをランダムに決定するように指示したり、ファイルの中身に踏み込んだアクションを行わせている。
さらに、具体的なプレゼントの候補を探すために、Web検索機能を使う例なども示された。
デモ2:自宅のメンテナンス・アシスタント
もう一つの例として自宅のメンテナンス記録をChatGPTで管理するプロジェクトが紹介された。
まず、自宅に関するタスクの履歴(いつフィルター交換したか、等)を記録したExcelファイルをアップロードし、他に、家電の取扱説明書や、スマートホームの設定書などのドキュメントを揃えておく。
そこで、「冷蔵庫の水フィルターは交換する時期ですか?」と質問すれば、アップロードした冷蔵庫の説明書と、最後に交換した履歴を踏まえて、交換すべきかどうかを回答してくれる。
「フィルターの交換方法は?」と聞くと、冷蔵庫の説明書から、具体的な手順を回答してくれる、といった具合だ。
このように、プロジェクトをうまく使いこなせば、PDFなどのドキュメントを蓄積していって、自分専用のデータベースとして活用することが可能だ。
自宅の家電などの管理だけでなく、例えば大学の授業を受けている時に、講義ノートを全てアップロードして、その授業の模擬テストをやってもらう、など、様々な応用が考えられる。
デモ3:テンプレートからWebサイトを自動構築
エンジニアの利用シナリオとして、自分のポートフォリオを掲載するウェブサイトを、ChatGPTに作らせるデモが行われた。
プロジェクトには、自己紹介テキスト、SNSアカウントへのリンクURL、同僚からの推薦文などのファイルをアップロードする。
また、Webサイトのテンプレートとして、「Astro Wind」というTailwind CSSとAstroというテンプレートエンジンを組み合わせたファイルを与える。
そして、「Canvasを使って、ベースラインテンプレートを編集し、プロフィール情報やSNSリンクを組み込め」という指示をChatGPTに対して行う。
すると、瞬時にテンプレートのコードが編集され、必要な情報がテンプレートのデフォルト文と差し替えられて、完璧なレイアウトのポートフォリオWebサイトが構築された。
Canvasを利用しているので、例えば「同僚からの推薦欄に、新たにXXという人物からの推薦文を加筆せよ」などと指示すると、必要な部分だけが編集されて、コードがブラッシュアップされる。
ウェブアプリなどを開発している際に、コードベースをChatGPTのプロジェクトにアップロードすれば、便利なコーディングアシスタントが手に入るというわけだ。
プログラミングの学習時にも、自分が取り組んでいるプロジェクトのファイルをアップロードすれば、何でもアドバイスをしてくれる、非常に心強いパートナーになってくれるだろう。
Claude Projects、NotebookLMなど競争は一層激化
アップロードされたドキュメントのRAGと、チャットインターフェースを組み合わせた「プロジェクト」的な機能は、すでにAnthropicのClaudeや、GoogleのNotebook LMでリリースされていた機能だ。
ついにChatGPTにもプロジェクト機能が実装されたことで、さらにユーザーの選択肢が広がることとなる。
Canvas機能やWeb検索機能など、ChatGPTの強力な機能群を、プロジェクト内で利用することができるので、かなり魅力的な選択肢だ。
非常に応用範囲が広いので、私生活での勉強や読書、会社での議事録作りや資料作りまで、あなたのワークフローにも組み込む余地があるはずだ。