
メカニカルキーボードや自作キーボードに興味を持ったことがある人であれば、一度は「左右分割型」や、「オーソリニア配列」などの特殊配列キーボードに興味を持ったことがあるのではないか。
「左右分割型」キーボードの最大の利点は、肩幅に合わせてキーボードを配置できることで、猫背や前屈みの姿勢を防ぎ、長時間のデスクワークによる負担を軽減してくれる。
また、旧来のキーボードは人間工学的には非合理な左右にズレたキー配置になっているので、これを指の縦方向の曲げ伸ばしだけでタイピングできるように改善した「オーソリニア配列」も、指や手首に優しい。
こうしたエルゴノミクス(人間工学)に配慮した合理的な設計のキーボードが普及すれば、プログラマーからライター、オフィスワーカーまで、多くの人が恩恵を受けられるはずだ。
しかしながら、日本国内で買える「左右分割」かつ「特殊配列」の製品は、異様にキーの数が少ないマニア向けのカスタムキーボードばかりで、選択肢がほぼない。
エルゴノミクスは気になるが、無駄にキーの数を減らした縛りプレイをしたいわけではないので、普通の人が、人間工学に配慮したキーボードを購入したいと思ったとき、最適な製品はないものか・・・。
そんな中見つけたのが、本記事で紹介する「Dygma Defy」だ。
「Dygma Defy」は、左右分割型で、オーソリニア配列(カラムスタガード配列)を採用したメカニカルキーボードだ。特殊キーを親指に集める「Thumb Cluster」を採用し、ホームポジションで多数のキーを使えるように維持しつつも、小指の負担や手首の移動を低減してくれる。
また、キーボードを傾けて手首を自然な角度に導く「テンティング」機構も折りたたみ式で内蔵しており、エルゴキーボードに期待する機能が全て詰まった決定版的な製品だ。

日本からも公式サイトで購入でき、非常に機能も充実しているので、初心者から上級者まで、エルゴノミクスに配慮したメカニカルキーボードが欲しくなった人は、ぜひ選択肢に含めるべきだ。
本記事では、実際にDygma Defyを長期使用した筆者が、機能や特徴を詳細にレビューしていく。
Dygma Defy 開封の儀:高級感ある外観、付属品も充実
Dygmaは、元プロeスポーツコーチが、ゲーミングパフォーマンスと快適性・健康の両立を叶えるメカニカルキーボードの開発を目指して創業した企業だ。先行モデルDygma Raiseを経て、2023年に発売されたのがDygma Defyである。
国際輸送され日本に届くが、頑丈なトラベルケースが無料で付帯する。オフィスなどに持ち歩く際にも、そのままトラベルケースを利用できるので便利だ。
また、交換用のキーキャップや、テスト用のキースイッチが付属するので、購入時に選択した以外の種類のキースイッチを試して、自分好みにカスタマイズしていくこともできる。

ビルドクオリティは非常に高く、全体的に高級感がある。アルミニウム製のトッププレートと、プラスチック製のボトム、そして手首部分のマグネット式のクッションを備えている。

パームレストは柔らかく手首を支えてくれて、快適な作業をサポートしてくれる。
取り外し可能なので、外してサッと拭くことも可能だし、長年使ってくたびれてきたらパームレストだけ買い替えるなど、長く使える工夫があるのは嬉しい。

なお、購入時には様々なオプションを選択可能となっている。
- 本体カラー:黒、シルバー
- キーキャップ:無刻印(ダッシュ)、US、その他追加オプションあり(JISはなし)
- キースイッチ:
- リニア(Gateron G Pro 2.0 Yellow)
- タクタイル(Kailh Silent Brown)
- クリッキー(Kailh Box White)
- その他追加オプションあり
- オプション:
- テンティング機構は+$80
- Bluetooth対応は+$90
- RGBWアンダーグロー追加は+$80
オプションのうち、テンティング機構は絶対につけた方が良い。
本体背面に折りたたみ式の脚が組み込まれ、簡単に60度までの角度をつけたテンティングを使えるようになるので、Dygma Defyのエルゴノミクスのメリットを全て体感するためには必要不可欠だ。
Bluetoothオプションがない場合、二又の有線接続で利用する形になる。有線接続時は、「Neuron」と呼ばれる小さなハブを間に接続する(Neuronにメモリが入っており左半分/右半分のみでも動作するようになっている)。

Bluetoothオプションを付けると、USB3.0の有線接続、5台までのBluetooth接続、より低レイテンシのRF 2.4GHz接続に対応する(※)。
本体下部をRGBWでライティングする「アンダーグロー」オプションは、Bluetoothオプションと同時にしか選択できないので、見た目を重視する場合はオプションを全て付ける必要がある。
ちなみに、付属するトラベルケースを、MacBook Airの14インチと並べてみた様子が以下の写真だ。16インチのPCを収納できるバックパックであれば、ギリ入るくらいのサイズ感になっている。

※現在のところ技適マークがないようなので、日本国内で無線モードを適法に利用するには、総務省への電波利用電子申請(実験等の特例制度に該当する場合)が必要だ。
左右分割型キーボードの利点
左右スプリットキーボードの最大のメリットは、より自然な姿勢でタイピングできるようになる点にある。
通常のキーボードでは、体の中心に両手を集めるので、どうしても猫背・前傾姿勢になりやすい。また、手首にも、常に外側に曲げるような力が働いてしまう。
毎日8時間以上もタイピングすることになるデバイスが、常に手首に負荷をかけ、猫背を誘発するようなデザインになっているわけで、デスクワークでの肩こりや腱鞘炎などの不調を感じている人は、真っ先に改善すべきポイントだ。

Dygma Defyのような左右分割型レイアウトのキーボードであれば、デスク上のキーボードの配置を、自分の肩幅に近い幅に設定できる。
左右分割キーボードを使うようになって分かった最大のメリットは、腕を肩幅に開いた状態では、むしろ猫背になる方が難しいので、無意識に肩や背中の姿勢を改善できるということだ。
また、手首を外側に回すような動きも不要になり、腕から手先までが真っ直ぐにつながっているような状態でタイピングができる。

オーソリニア配列キーボードの利点
皆が知っている伝統的なキーボードは、行ごとにキーの配置がズレている。これを、「ロウスタッガード(行ズレ)」配列と呼ぶ。
なぜこのような配列になっているのか、疑問に思ったことはないだろうか?
これだけ普及しているということは、昔のエラい人が考えた合理的な配列で、運指が効率的になる等の利点があるのでは?と思うかもしれないが、実はそんなことは全くなく、合理性は皆無に近い。
1800年台にタイプライターの機械的・内部構造的な理由で考案されたレイアウトが、なぜかコンピューターが普及した現代まで、生き残ってしまっただけなのだ。
Dygma Defyをはじめ、エルゴノミクスキーボードは、より指の移動距離を短縮するべく、キーが縦に一直線に並んだ「オーソリニア(格子状)」かつ「カラムスタッガード(列ズレ)」レイアウトを採用していることが多い。

ホームポジションから、指を真上・真下に動かすだけでキーを叩くことができるため、長文を打つ際の指の総移動距離を短縮できる。
また、中指の長さに合わせ、中指の担当列は上部に飛び出ており、反対に短い小指の列は半段下がった位置に配置されている。
初めてオーソリニア配列に移行した場合、最初の数日は打ち間違いが多くなるが、意外にもすぐ慣れる。
指の自然な動きの範囲内でタイピングできるので、すぐに通常のキーボードより違和感なく打てるようになる。
非常に完成度・自由度が高いテンティング機構
テンティングとは、キーボードを机の上にフラットに置くのではなく、角度をつけて配置することを指す。
本来、手首を脱力して最も自然な状態で机の上に置くと、握手をするような角度になるはずだ。しかし、フラットなキーボードでは、手首を内側に回転させているので、実は常に前腕から手首にかけて緊張がかかった状態になってしまっている。
テンティングは、手首をより自然な角度にすることができる仕組みだ。

多くの自作キーボードの場合、テンティング機構は内蔵されていないので、カメラの三脚穴を活用して角度をつけるなど、色々と試行錯誤が行われている。
Dygma Defyの強みは、非常に完成度の高いテンティング機構が内蔵されていることだ(テンティングオプションは必ずつけよう)。
裏面に折りたたみ可能なテンティング用の脚が内蔵されており、畳んだ状態では完全にフラットになる。
背面の脚部分には、以下の画像のようにアングルが印字されており、5度から60度まで、細かくテンティングの角度を調整可能だ。

安定感も非常に高く、テンティングした状態でもガタつくことは無い。
初心者は、控えめな角度からテンティングに入門するのが推奨だ。筆者の場合、少し角度をつけると小指の可動域が広がり自然にタイピングができるように感じるので、15度のテンティングを設定している。
ちなみに、60度のアングルをつけると以下のようになる。かなり急傾斜のテンティングが、備え付けの機構だけで実現できるのは非常に嬉しい。

また、注目すべきは「ネガティブティルト」に対応していることだ。背面の脚の組み合わせによって、3段階のネガティブティルトを設定可能になっている。
ネガティブティルトは、以下の写真のように、手首側を高く、奥側を低くする配置である。
タイピング中の手首の上方向への曲げを極限まで減らし、前腕から手首までを直線に保つことができる。

特徴的な親指クラスターの魅力
Dygma Defyのアイコンとも言えるのが、左右8個ずつのキーが並んだ「親指クラスター(Thumb Cluster)」である。
エンター・スペース・バックスペース・Shiftなどの修飾キーを、親指に割り当てることによって、ホームポジションから手首を動かすことなく、ほとんど全てのキーを操作可能になっている。

伝統的なキーボードは、エンターもShiftもControlも、ほぼ全ての修飾キーを小指が担当している。キーボードの長時間使用で、小指側を痛めた/腱鞘炎のようになってしまった経験がある人も多いのではないだろうか。
親指クラスターは、より筋肉があり頑丈な親指に、修飾キーの役割を担わせることによって、小指の可動量を減らしつつ、スペースバーくらいしか役割がない親指をもっと活用するという設計思想だ。
これもまた、慣れるまでには数日を要するものの、コピー&ペーストや元に戻すなどのキーボードショートカットが圧倒的に使いやすくなる。
レイヤーの使い方については詳述するが、親指を起点にしてレイヤーを移動する機能なども活用すると、もう普通のキーボードには戻れなくなってしまう。
付属ソフト「Bazecor」が使い易い&カスタマイズに超便利
他社のカスタムキーボードと比べた際のDygma Defyの最大の強みは、キーマップ変更やRGB設定が可能な付属ソフトウェアの「Bazecor」だと思う。
本当に使いやすいUIで、キーボード業界では最も使いやすく完成度が高いキーマップエディタだと評価して良い。WIndows, Mac, Linuxに対応している。
キーボード初心者や非エンジニアのユーザーでも、キーの配置、RGBの色変更、マクロの編集を、視覚的に確認しながら行うことができる。
キーマップの編集機能
Dygma DefyをPCにUSB接続した状態で、Bazecorを起動すると、視覚的にキーマップを変更できるレイアウトエディタが使用できる。
また、編集を保存した瞬間に本体に即反映されるため、キーマップを変更→試してみる→しっくりこず再修正する、というプロセスを、全くストレスなく行えて感動する。

初心者にも優しいデザインでありながら、一つのキーにタップ時/長押し時で異なるキーを割り当てたり、「Control + Space」などショートカットキーを割り当てたり、高度なマクロを編集できたり、非常に自由度が高い。
自作キーボード・カスタムキーボードの世界では、基盤に「QMK」や「ZMK」というオープンソースのファームウェアが搭載されており、キーマップを変更するためにプログラミングの知識が必要なこともある。これが、初心者がエルゴキーボードに挑戦するハードルを高めている要因の一つとも思える。
Dygma Defyならば、一切プログラミングの知識がない初心者でも、Bazecorを使ってカスタマイズを楽しむことができる。それでいてQMK並みの高度なカスタマイズ性を備えており、上級者も満足できる仕上がりになっている。
優れたUIと、高度なカスタマイズ性を両立するソフトウェアの開発力を備えたカスタムキーボードメーカーは、非常に貴重な存在だ。
個別キーのRGBカラー設定
キーマップの変更だけでなく、同じくBazecorのレイアウトエディタ上で、キー1つ1つを色分けすることができる。色分けはレイヤー毎にも変更が可能だ。

特に親指クラスターはキーの数が多いので、どのキーに何の役割を割り当てたのかを、視覚的に確認できないと若干不便を感じる。
そこで、削除(Backspace / Delete)は赤色、レイヤー移動は黄色、英字/かな切替は白色、といったように、役割とカラーを対応させることで、より使いやすくなるのだ。

RGBWは、満足感・所有感を高めてくれるだけでなく、実用性も高い。アンダーグローのみオプションだが、オプションなしでも全てのキーの個別RGBWは付属するので安心だ。
また、アンダーグローの色も変更可能で、左右で別の色を割り当てることなどもできる。
アンダーグローをオンにすると、夜間の作業時に、デスクの上だけを照らすことができて使い勝手が良い。

レイヤーによる用途別のキーマップの設定
Defyでは、キーマップを「レイヤー」として最大10種類まで本体に保存できる。
レイヤーを移動するキーを設定しておくことで、用途に応じて特定のレイヤーに移動することができる。普段は修飾キーとして使えるが、長押ししている間だけ別レイヤーに移動する、なんて設定も可能なので、キーが足りなくなることもない。
例えば、デフォルトで第2レイヤーに設定されているのが、矢印キーやテンキーのナビゲーションレイヤーだ。
左手をカーソル移動用に、右手を電卓のようなテンキーとして使用でき、Excelやスプレッドシートで数字を操作するのにも非常に便利だ。

こうしたレイヤーを設定すると、記憶しなければならないキーマップが倍になるので不安なところだが、Dygma Defyなら、レイヤー毎に個々のキーのRGBWカラーを変更することもできる。
個別キーのRGB設定は、特にレイヤーの設定と組み合わせることで更に活躍してくれる。
例えば、矢印キーやテンキーの位置をRGBWで光らせることで、どこに数字があるのかを目視で確認できるため、特に覚える努力をしなくても、複数のレイヤーを使いこなせるのだ。

ゲームプレイ専用のレイヤー、Photoshopや動画編集ソフトなどでよく使うキーボードショートカットを大量に割り当てたレイヤーなど、自分の用途に合わせた専用のコントローラーのようにDefyを活用できる。
イラストを描いている時用のレイヤーを作って、ペンタブと組み合わせ使用する「左手デバイス」として、左手部分だけを使う、なんてこともできてしまう。
レイヤーを戻せば通常のキーボードとして使用できるし、左手デバイスを買うお金も節約できて一石二鳥だ。

Bazecorで設定できる高度なマクロなど
Bazecorで実現できるのは、単にアルファベットや修飾キーの位置を変えることだけではない。
一つのキーを押しただけで、複数のキーを組み合わせたキーボードショートカットを呼び出す、なんてことも可能になっている。
各キーに割り当てることができる高度な設定の例としては、主に以下のようなものがある。
- Advanced Modifiers
- タップ時は他のキーとして使えるが、長押しした時だけShiftやControlなどとして機能する、といった設定が可能
- Macros
- 単一のキーに、定型文やゲームのコンボなど、時間差や順番のある複数キーの組み合わせを割当可能
- Superkeys
- 単一のキーに、最大で5つのショートカットキーを割当可能
- タップ、ダブルタップ、長押し、タップ&長押し、ダブルタップ&長押しで区別
- Media & LED
- 再生/音量などのメディアコントロール、画面の明るさ、キーボードのLEDの制御、PCのスリープ/シャットダウンなど
- Mouse
- 単一のキーに、マウスのクリック操作、カーソル移動、ホイール操作を割当可能
特に「Superkeys」は非常に便利で、親指キー1つで、頻繁に使うキーボードショートカットを複数実行できるようにするのがおすすめだ。
筆者は、コピー、カット、ペーストを全て実行できてしまうSuperkeysを、親指キーのうちの1つに割り当てている。
これによって、いちいちCommand + C
→Command + V
のショートカットを交互に使わずとも、親指1本でコピペができるようになっており、文章を書く際にとても楽になった。

また、「Macros」は、単に複数キーを組み合わせたショートカットを超えて、「タイムライン」付きでキーの組み合わせを指定することができる。
例えば、いつでもどこでも「大変お世話になっております。」という定型文を実行できるキーを作ってしまう、なんてことができる。
しかも、「Superkeys」の中にマクロを埋め込むことも可能なため、一つのキーに、5つのマクロを埋め込むことも可能だ。メールの署名やよく使う定型文をまとめて、親指クラスタにSuperkeys機能で埋め込んでおけば、生産性がかなり向上する。

Dygma Defyで快適に日本語入力をするには
Dygma Defyは、ヨーロッパの企業が開発しているため、キーキャップに日本語のオプションはないが、キーマップ変更ソフトのBazecorが非常に高機能なので、日本語入力やJIS配列にも対応でき、実用上は何も問題ない。
ここでは、筆者がDefyを日本語環境で使う上で設定しているオススメのキーマップを紹介する。
US配列のDefyで「かな」「英数」をスマートに切り替える方法
US配列のキーボードを利用する場合、MacやWindowsで、どうやって「ローマ字入力」と「かな入力」を切り替えるべきかが問題となる。
Bazecorのカスタムキーコードやショートカットを駆使することで、日本語入力への切り替えもスマートに行うことができるので、筆者のおすすめの設定を紹介しておく。

Bazecor上で、以下の設定を行うことで、キーボードショートカット不要で、ワンタップで英数/かなの切り替えが可能になり、通常のUSキーボードより遥かに便利に使える。
- Custom Keycodeを使い、親指クラスターに「かなキー」「英数キー」を設定
- 「Control+Space」によるIME切り替えショートカットを、単一のキーに割り当てる
Bazecorには、ビジュアルエディタ上に表示されている一般的なキーだけでなく、日本語のキーボードにしか存在しないような特殊キーを、IDで指定することで呼び出せる「Custom Keycode」機能がある。
以下のKeyCodeが、それぞれMacやWindowsの「かなキー」「英数キー」に該当する。
- 0x190 : かな
- 0x191 : 英数
レイアウトエディタの右下にある「Custom Keycode」をクリックして、数字を入力して保存することで、好きなキーに割り当てられる。

また、WindowsでもMacでも、かな入力と英数入力の切り替えを、「Control + Space」で行うことができるOS標準のキーボードショートカットがある。
Bazecorでは、一つのキーに、複数のキーを組み合わせたキーボードショートカットを割り当てることも可能なので、この機能を使って、「Control + Space」を割り当ててしまう。

以上の設定を行うことで、WindowsやMacに追加のソフトをインストールする必要なく、日本語切り替えをスムーズに行うことができる。
社用PCや、友達のPC、タブレットやスマホでも、自宅と変わらない使い心地を実現できるので、キーボードのファームウェア側でカスタマイズが可能なDygma Defyの大きな利点と言えるだろう。
いっそDefyをJIS配列で使ってしまう場合
Bazecorによるカスタマイズ性が非常に高いため、究極、JIS配列のキーボードとしてDygma Defyを利用することも可能である。
これもまたファームウェアレベルでキーマップを変更可能なカスタムキーボードの魅力である。

Bazecorの設定を開くと、キーレイアウトの国名を指定できるメニューがあり、ここで「Japanese」を選択すると、レイアウトエディタで表示されるキーがJIS配列のキーになる。

JISで利用する場合、特に記号はキーキャップの印字と一致しなくなるので、購入時に「無刻印」キーキャップを選択すると良い。
ホットスワップ対応で長く使い続けられる
メカニカルキーボードの魅力は、キースイッチを交換することで、自分好みのタイピング感・押し心地を追求できることだ。
カスタムキーボードの中にはハンダ付けが必要なものもあるが、Dygma Defyは、ホットスワップ対応なので、キースイッチを簡単に外したり、ハンダ付け不要で別のキースイッチを差し込んだりできる。
一般的なCherry MXキースイッチと互換性があるので、Dygma Defyを購入した後も、自分で購入したスイッチと入れ替えることが可能だ。

付属品として、Dygma公式が販売しているオプションのキースイッチのサンプル(写真左)が付属するので、普段使っているキースイッチと入れ替えてみて、使い心地を体験することもできる。
デフォルトで選択できるスイッチは以下の3種類である。リニアは最もスムーズにスコスコと打てるスイッチ、タクタイルは引っ掛かりがあり、クリッキーはカチカチ音があるスイッチだ。
- リニア(Gateron G Pro 2.0 Yellow)
- タクタイル(Kailh Silent Brown)
- クリッキー(Kailh Box White)
さらに、購入時にオプションで以下のキースイッチを追加することもできる。
- リニアスイッチ
- Kailh Silent Pink
- Kailh Speed Silver
- Cherry MX Red
- タクタイルスイッチ
- Kailh Speed Copper
- Cherry MX Brown
- クリッキースイッチ
- Cherry MX Blue
これらは付属品のサンプルセットに入っているので(Kailh Speed Silverを除く)、到着してから色々試してみて、将来追加購入するスイッチを選んでみても良いだろう。
筆者はメカニカルキーボードを多数所有しているので、キースイッチもコレクションがあるのだが、お気に入りは押下時の力が要らないリニアスイッチである。
Gateron G Pro 2.0 Yellow(50±15gf)を選択したが、更に軽い押し心地が好きな人は、押下圧が40±10gfと更に低い「Kailh Speed Silver」もオススメだ。
長期使用体験記:最初の1-2週を乗り越えれば快適に
これまで多数のメカニカルキーボードを所有してきた筆者だが、通常のQWERTY配列のものしか使用したことがなく、左右スプリット型も、オーソリニア配列も初挑戦となった。
Dygma Defyを使い始める前に、不安だった点としては、以下がある。
- オーソリニア配列への不安
- オーソリニア配列に果たして適応できるか?
- 適応したとして、同時に社用PCなどのQWERTYを使い続けられるのか?
- 左右スプリットへの不安
- 両手で対応しているキーも多いが(中央の”B”など)、片手だけで行けるのか?
- キー数が減ることへの不安
- 矢印キーやFunctionキーがなくなるが、レイヤー機能で対応できるか?
結論としては、いずれの不安も、全然問題なく適応できてしまった。仕事で使えるレベルになるのが1-2週後、完全に無意識で使いこなせるレベルに到達するのは3-4週後というイメージだ。
最も違和感が小さかったのが、左右スプリットだ。左右の手が離れていても一切問題ないことに気付かされた。
右手で打つべきキーを左手で打つ、といった悪習慣が自然に矯正され、手首を一切動かさずにホームポジションでタイピングが継続できるようになり、メリットばかりだった。
オーソリニア配列は、やはり多少の違和感はあった。初日からそこそこ使えるものの、MonkeyTypeで測定したWPMは、元々の80-90から、40-60に落ちてしまった。
中指が”C”を担当する、といった指ごとの分担が定着するのに時間がかかったが、2週間で元のタイピング速度に完全に戻ったので、適応にかかる時間は意外と短い。
一番時間がかかったのは、ショートカットキーの感覚を取り戻すまでだ。Control + Cでコピー、Control + Zで戻る、というショートカットが体に染み付いているので、ついつい元の配置で指が動いてしまう。
親指クラスターで無意識レベルでショートカットを呼び出せるようになるまでには、3-4週間かかったような感覚である。
また、レイヤー機能も手放せないほど便利だ。RGBで導かれ、レイヤー間の移動も体にすぐ染み付く。
特にテンキーレイヤーは大活躍している。省スペースなキーボードでも数字の入力が非常に快適になるので、表計算やデータ操作が多いオフィスワーカーにもオススメだ。
ちなみに、Dygma Defyに慣れた後、普通のノートパソコンなど旧配列に急に戻ると、明らかに打ち間違いは増える。
ただ、1時間くらい触っていると徐々に感覚を取り戻してきて、タイプミスも減っていくので、それほど心配しなくて良いだろう。
総評:キーボードファンの夢全部盛り&完成度も高い

Dygma Defyは、左右分割、オーソリニア、テンティングというキーボード沼にハマった人々が最後に辿り着く選択肢を、全部盛り込んだ究極のキーボードだ。
それでいて、自作キーボードにありがちな敷居の高さがなく、使いやすいキーマップエディタや、高級感・デザイン性も兼ね揃えている。エルゴノミクスキーボードを求める一般のオフィスワーカーや、カスタムキーボード初心者にも最適な選択肢だ。
ホットスワップ対応やRGBなど、メカニカルキーボードならではのカスタマイズの楽しさも備えており、所有欲も満たしてくれるので、中上級者も満足できるはずだ。
左右分割・オーソリニア配列のエルゴキーボードに興味があるが、望みうる機能を一通り備えた王道のキーボードが欲しい、というユーザーの第1選択肢となる。
最後にこの記事で触れたメリットと、考えられるデメリットなどをまとめておく。
Dygma Defyの魅力
- 入手性:日本からも送料無料で購入可能(中国から発送)
- 左右分割:姿勢の改善、手首の負担軽減
- 合理的なキー配列:オーソリニア配列、親指クラスターによる手指の負担軽減
- 内蔵テンティング機構:追加でアクセサリを買わずに柔軟な角度でテンティング可能、ネガティブティルトも
- 高品質なソフトウェア:キーマップの変更が史上最強に簡単
- 高いビルドクオリティ:外観の美しさ、パームレストの快適さ、RGBWのかっこよさ
- 長期使用に耐えうる仕様:2年保証、ホットスワップでキースイッチの交換可能
Dygma Defyの留意点
- 初期学習コスト:新レイアウトに慣れるのに1-2週間、完全に無意識で使えるのに3-4週間
- 持ち運び:アルミ筐体で安定感ある分、総重量は約1kgで、出張や旅行には持って行きにくい
- 価格感:テンティングオプションありの構成で$449
少し勇気のいる価格感ではあるものの、HHKBなどの高級キーボードの価格帯(4-5万円)を考えれば、エルゴノミクスに配慮した特殊配列のカスタムキーボードとしては納得の価格帯ではある。
なお、Dygma Defyは、公式サイトから購入できる。99ドル以上の注文は送料無料になるため、日本からも送料無料で購入することができる。自作キーボードやカスタムキーボードは、在庫が僅少でそもそも買えないことも多いため、海外から個人でいつでも購入できるのは嬉しい。

また、Dygmaの公式YouTubeチャンネルでも、Dygmaの機能や設定が解説されているので、動画で実物を見てみたい人は参照することを勧める。
開示事項:当サイトでのレビューを行うため、筆者からメーカーに連絡を取り、レビュー用端末の提供を受けた。金銭的報酬は一切受領しておらず、すべての評価は筆者の実使用に基づく。