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2025年1月16日、骨伝導イヤホンなどで知られる「Shokz」から、オープンイヤー型イヤホンの新作「OpenFit 2」が国内発売された。
「オープンイヤー」型とは、カナル型イヤホンやヘッドホンのような密閉型ではなく、「耳を塞がない」快適な装着感を追求した独特なイヤホンだ。
AirPods Pro 2などのカナル型イヤホンを使うと、すぐに耳が痛く/かゆくなりがちな筆者は、オープンイヤー型イヤホンの大ファンである。
AirPods Pro 2やBose 700などの高級オーディオ機器を複数所有しているが、結局、毎日オープンイヤー型イヤホンばかり使っている。
本記事では、様々なブランドのオープンイヤー型イヤホンを愛用してきた筆者が、Shokzの「OpenFit 2」をがっつり使ってみた感想を、詳細にレビューする。
総評としては、現在入手できる主要なオープンイヤー型の選択肢の中でも、装着感・バッテリーライフともにトップクラスでありながら、価格は競合より抑えられており、誰にでもオススメできるモデルだと感じた。
一度使うとやめられないオープンイヤーイヤホンのススメ
OpenFit 2をはじめとするオープンイヤー型イヤホンは、一度使うと本当に手放せなくなるほど快適だ。
まだ使ったことがない人に、この感動を伝えるのは難しいのだが…。
カナル型イヤホンや密閉型ヘッドホンを長時間使っていると、耳の中や周りがムレる、耳に痛みが出るなど、様々な悩みを抱えている人も多いのではないか。
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コロナ禍以降、出社は増えたものの、未だ打ち合わせはオンラインで行われることも多い。仕事で一日中イヤホンを着けていると、不快感も積もっていく。
オープンイヤー型イヤホンは、こうした長時間使用による悩みを、全て解決してくれる。
圧迫感や挿入感がないため耳が痛くなりにくく、また通気性も良いため汗をかいてもムレることがない。耳を塞がず外の環境音が聞こえるため、オフィスでの勤務中や、コンビニなどへの外出中も、ずっとつけっぱなしにできる。
ランニングやスポーツをする人だけでなく、オフィスワーカーや在宅ワーカー、学生や資格勉強中の社会人まで、一度はこの快適さを体験してみて欲しい。
Shokz OpenFit 2 実体験レビュー
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オープンイヤー型イヤホンへの筆者の情熱を伝えたところで、早速、OpenFit 2をレビューしていく。
OpenFit 2の様々な機能やスペックの中でも、筆者が使用中に感動したポイントを抜粋し、以下ひとつひとつ、実際の使用感や実際のデータを交えながら解説していく。
スペック表よりも、実体験を知りたいという人は、ぜひ参考にして欲しい。
なお、筆者が以前からオープンイヤー型イヤホンを愛用していることもあってか、幸運にも、今回Shokzさんから「OpenFit 2」の提供を受けることができた。とはいえ、レビューの内容は、内容の指定や発言の制限などなく、筆者の感想を率直に書いたものだ。
着けているのを忘れて生活できる装着感と軽さ
Shokz OpenFit 2 は、イヤーフックで耳に上から引っ掛けるようにして装着する。
スピーカー部分は平面になっており、耳の穴の上にそっと添えるような優しい装着感となる。耳が塞がれないので、音楽と、外部の環境音が同時に聞こえる状態だ。
片耳の重さは約9.4gで、見た目が大きい割に、かなり軽量だ。
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このOpenFit 2のイヤーフックだが、驚くほどぷるぷる柔らかく、全体的に指で押したらぷにっと凹む感じだ。
あまりにふわふわぷるぷるなので、動画を撮影したものをGIF形式にしてみた。この柔軟性によって、耳の形にしっかりフィットしつつ、軽快な装着感が実現されているのだと思う。
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男性である筆者だけでなく、女性の家族にも試してもらったが、圧迫感なく、激しく動いてもズレることなく、快適に装着できていた。
また、この形から、最初はメガネと併用できるのか?と思ったが、実際に試してみると、メガネのフレームとOpenFit 2の干渉は、あまり気にならなかった。
筆者はパソコンで作業する際にメガネをかけることが多いのだが、金属製の軽めのメガネ+OpenFit 2で数時間連続で作業をしたところ、特に痛みや不快感は生じなかった。
ずっしり分厚いフレームのメガネとはさすがに干渉するだろうが、軽量フレームのメガネとは問題なく両立できるだろう。
丸一日、音楽再生&通話してもバッテリーは超余裕
実際に使用する中で、OpenFit 2の最大のメリットの一つは、バッテリーライフだと感じた。
筆者はOpenFit 2を入手してから毎日、オフィスに到着してから一度も外さずに過ごしているのだが、実際、勤務終了までバッテリーが切れないのだ。
実験のため、ストップウォッチでOpenFit 2を耳に付けた時間を計測し、ずっと音楽を再生したままにして、かつ15分以下の音声通話を3回行うなど、1日自然に過ごしてみた。
残量100%からスタートして、一度も充電ケースに戻さず、8時間が経過したところで…
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左右イヤホンのバッテリー残量をShokzのアプリから確認してみると、左20%、右30%と表示された。
8時間にわたって音楽再生&音声通話を行ってなお、イヤホン単体でこれだけのバッテリーが残っているのは、かなり優秀と言えるのではないか。
もちろん、ケースのバッテリーはまだまだ残っているので、ケースに収めれば翌日、翌々日も充電なしで戦える可能性が高い。
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Shokzの公式ページには、本体だけで最大11時間、ケースも合わせれば計48時間という、驚異的な再生時間が記載されている。
これは、現在市場で入手できる競合のオープンイヤー型イヤホンと比べても、群を抜いて長い再生時間だ。
ブランド | 製品名 | 発売年 | 公式価格 | バッテリー(ケースあり計) |
---|---|---|---|---|
Shokz | OpenFit 2 | 2025 | 25,880円 | 11時間(48時間) |
Shokz | OpenFit Air | 2024 | 19,880円 | 6時間 (28時間) |
Shokz | OpenFit | 2023 | 24,880円 | 7時間 (28時間) |
Huawei | FreeClip | 2024 | 27,800円 | 8時間 (36時間) |
SONY | LinkBuds Open | 2024 | 29,700円 | 8時間 (22時間) |
SONY | LinkBuds | 2022 | 23,100円 | 5.5時間 (17.5時間) |
Apple | AirPods Pro 2 | 2022 | 39,800円 | 6時間 (30時間) |
業界トップクラスのバッテリーを備えながら、価格面でも他社と比較して若干安価である。
オープンイヤー型イヤホンの購入を検討中の人には、とりあえず第一候補としておすすめできるモデルになりそうだ。
左右独立型イヤホンでは珍しい「物理ボタン」のありがたさ
装着感・バッテリー持ちに次ぐ、筆者の嬉しかったポイントは、OpenFit 2の物理ボタンである。
OpenFit 2は、左右のイヤーチップの上部に、小さなボタンがついており、クリック、ダブルクリックなどによって再生コントロール・音量コントロールなどが可能だ。
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物理ボタンが嬉しい理由は、意図せぬ操作によって急激に音量が上がり、突然の轟音にビックリ、といった「イヤホンあるある事故」を防いでくれるためだ。
ベッドでごろごろしながらイヤホンを着けていたりすると、手や腕にイヤホンが触れてしまい、勝手に次の曲に進んだり、突然の大音量でびっくりしたり、なんてことがよく起きる。
OpenFit 2の物理ボタンのおかげで、タッチ操作と比べ、大幅にこうした誤作動を減らせたと感じる。
デフォルトのボタン操作は以下の通りだ(アプリで割り当てを変えることも可能)。
- クリック(左・右):再生と一時停止
- ダブルクリック(左・右):次の曲へ
- トリプルクリック(左・右):前の曲へ
- 長押し(左):音量を下げる
- 長押し(右):音量を上げる
ちなみに、実はタッチ操作にも対応しているのだが、デフォルトでOFFになっている。
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ボタン長押しによるボリューム操作の挙動は、「ボタンをクリックしたまま3秒長押しし続けると、1段階音量が上がる」というものだ。
意図せず長押ししすぎて、大音量で耳が破壊される…という事故が起きないUXになっており素晴らしい。
左右独立型のイヤホンで、イヤーチップ自体に物理ボタンがついているのは結構珍しいと思う。歴代のOpenFitシリーズにも物理ボタンはなかったし、上述のオープンイヤー型の主要ブランドの中でもOpenFit 2が唯一物理ボタンを備えている。
大型トラックの真横でも通話できるノイズリダクション
OpenFit 2にはマイクも内蔵されているので、電話はもちろん、zoomコールやLINE通話などでも利用できる。
一日中イヤホンをつけっぱなしで過ごしているので、オンライン会議もそのまま出席することになり、筆者はイヤホンを選ぶ際、通話性能も重視している。
Shokzの公式ページによれば、OpenFit 2には「高度なノイズキャンセリング技術とAIアルゴリズムを搭載」したマイクが採用されているとのこと。
実力がいかほどのものか、実際に騒音の大きな環境で使ってみた。以下のようなシナリオで、家族と電話・LINE・Facetimeを使って通話してみて、感想を聞いてみた。
- やたらと風が強い日に、顔・耳にダイレクトに風を受けながら通話
- 幹線道路沿いの歩道で、大型トラックが通ったタイミングで通話
いつものオフィスから自宅への帰り道なので、過去には他社のイヤホンで家族と通話した経験もある。その際には、風やエンジン音をノイズ処理した結果、声まで途切れ途切れになってしまい、相手がよく聞き取れないことがよくあった。
ところが、OpenFit 2の場合、向かい風のピークでも、大型トラックの走り去る真横でも、家族がちゃんと私の声を聞き取れていて、会話が成立した。
風の音や車の走行音も多少聞こえはするものの、声はちゃんと聞き取れるとのこと。
風向き・風速・音の種類などをコントロールできないので、厳密な比較テストは難しいのだが、少なくとも私たち家族の体感では、OpenFit 2は環境ノイズの処理性能が高いと評判だ。
散歩中など屋外でハンズフリー通話をしたい人には、有力な選択肢になりそうだ。
マルチポイント接続対応でPCとスマホをスムーズに往復できる
スマホで音楽を聴いて、オンライン会議の時間になったらパソコンで通話する、といったように、複数のデバイスでイヤホンを使いたい、という人も多いだろう。
OpenFit 2は、2台までのデバイスと同時に接続できる「マルチポイント接続」に対応している。
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例えば、スマホで音楽を聴いている途中で、パソコンで開いているYouTubeで気になる動画を見つけた場合、スマホ側で音楽を停止して、パソコン側で動画の再生を開始するだけで、パソコン側の音声に切り替わる。
筆者も、日頃からMac, iPhone, iPadを行き来して作業しているので、1つのイヤホンで全てを賄えるのは非常に便利だ。
充電ケースも軽くていい感じ
イヤーフックが収まるスペースが必要になるためか、OpenFit 2の充電ケースは、たとえばAirPods Pro 2のケースなどと比べると一回り大きい。
とはいえ手のひらに収まるサイズなので、ワイシャツの胸ポケットや、カバンのちょっとしたポケットに入れて持ち運べる。
重さはイヤホンとケースを合わせて約70gと非常に軽量で、総再生時間48時間という割に、バッテリーの重さを全然感じさせない。
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iPhone 12と並べてみると以下のようなサイズ感である。
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充電方法は、ケース外側にあるUSB-Cポートによる充電で、無線充電には対応していない。
バッテリー持続時間が長いおかげで、そもそも充電頻度が2-3日に一回で済むので、オフィスで離席中にスマホの充電器を使ってついでに充電しておく等すれば、あまり意識せずに過ごせるだろう。
オープンイヤー型イヤホンの主な弱点
以上が筆者が特に気に入った点だが、オープンイヤー型のOpenFit 2ならではの限界や制約にも触れておく。
いずれもオープンイヤー型の宿命とも言うべきデメリットだが、これらを補って余りある装着感や快適さから、一度オープンイヤー型イヤホンに魅了されると、特に気にならなくなるのだが…。
音漏れはするが、隣の席の同僚には聞こえない
構造的に密閉していないので、当然のように音漏れはする。
とはいっても、スピーカーのように丸聞こえというわけではなく、音量を大きくしすぎると、1メートル半径にいる人は気づく、というレベル感だ。
静かな環境では、そもそもボリュームを大きくする必要もないので、筆者はiPhoneで言うところの30%程度で音楽を聴いている。
これくらいのボリュームなら、とても静かな自室において、真横にいる家族への音漏れ具合を実験してみても、1メートル弱も離れれば何も聞こえなかった。
周囲のBGMや会話があるオフィスやカフェなら、なおのこと音を大きくしても大丈夫そうだ。
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ぎゅうぎゅうの満員電車などでは、周囲の騒音がうるさくボリュームをかなり大きくしてしまいがちなため、70%〜最大までボリュームを引き上げたりすると、隣の人に音漏れしてしまうだろう。
その意味では使う場所を選ぶが、オフィス、ジム、カフェなどの公共空間での音漏れは、あまり気にする必要はないと思う。
40~50%の音量であれば、ソーシャルディスタンス内では基本的に音漏れはない。
また、さらに音漏れを防ぎたい場合、Shokzのアプリのイコライザーに「プライベート」モードが用意されている。
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「プライベート」モードでは、高周波をカットした少しこもったような音にすることで、さらに音漏れが抑えられる。
低音が物足りない時もイコライザーで
そもそも、OpenFit 2の音はかなりいい。
ガチのホームシアターや高級ヘッドホンの音響と比べてしまうと劣るだろうが、イヤホンの中では、AirPods Pro 2などのハイエンド機と比べても、それほど劣らない印象だ。
(筆者レベルの耳では、ブラインドテストされると違いが分からなさそうなレベル)
一昔前の非カナル型のイヤホンは、シャカシャカと薄っぺらい音がしていたものだが、OpenFit 2では重低音の迫力すら感じられ、技術の進歩には驚かされる。
とはいえ、オープンイヤー型の宿命として、密閉型と比べると、ズッシリくる低音などは物足りなく感じる人もいるかもしれない。
どうしても気になる人は、Shokzのアプリに接続すれば、イコライザ機能でプリセットの「低音強め」「高音強め」モードを選んだり、あるいは自分好みのカスタムイコライザを作成することもできる。
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ノイズキャンセリングは当然ない
耳を塞がないという構造上、外部の環境音は筒抜けに耳に入ってくる。
コンビニの店員さんの声、オフィスの周りの同僚の声、ランニング中の車や自転車の音など、聞こえた方がよい環境音と、音楽視聴を両立できるのが、オープンイヤー型の魅力だ。
逆にいえば、騒音が大きすぎる環境では、外部の音に負けてしまって音楽が聴こえないので、ボリュームを上げる必要がある。
通勤電車、飛行機の中などでの使用にはあまり適さないが、オープンイヤー型のコンセプト上、必然である。
オープンイヤー型イヤホンの新定番になりそう
総評として、OpenFit 2は、オープンイヤー型イヤホンを探している人の第一選択肢となりうる製品だと感じた。
OpenFit 2は、非常に快適な装着感と、業界トップクラスのバッテリー持続時間、物理ボタンの操作性、リモートワークで嬉しいマイク性能など、重要性の高い機能がバッチリ揃っている。
ずっとつけっぱなしにしていても痛みや不快感が生じないことに加えて、2-3日間も充電不要で過ごせるバッテリー持続時間があるので、いよいよ耳から外す必要もなくなってきた。
イヤホンやヘッドホンの装着感に悩みを持っている人は、ぜひ試してみてほしい。
最後に、オープンイヤー型イヤホンを長年愛用する筆者から、理想のイヤホンを選ぶ際のコツを紹介する。
筆者は、かつてSONYのLinkbudsを使用していたが、元々のバッテリー容量がとても小さいために(再生5.5時間)、2年も経たずに充電がもたなくなり、買い替えることとなった。
iPhoneなどのスマホですら、2年も使えばバッテリーが60-80%に劣化することを考えれば、当然のことといえば当然のことだ。
その点、お気に入りのイヤホンを長く使い続けたいならば、とにかくバッテリー容量が大きいモデルを選んでおくのが吉だ。
OpenFit 2(再生11時間)のように元々のバッテリー容量が大型であれば、2-3年愛用して多少バッテリーが劣化したとしても、バッファが多くあるので安心感がある。
これはオープンイヤー型に限らず、左右独立型のイヤホン全てに共通して言えることだと思うが、バッテリー容量は大きければ大きいほど、より長期間使い続けることができるのだ。