中国企業発の大規模言語モデル「DeepSeek R1」は、OpenAIのo1に匹敵する推論性能を持ちつつ、なんと1日50回まで無料で使用することができる超お得なモデルだ。
無料という魅力には誰も勝てず、アメリカのApple App Storeでも、ついにChatGPTを抜いてDeepSeekが人気No. 1となってしまった。
一方で、中国本土の企業によって開発されていることから、プライバシーや検閲について懸念を表明する専門家も多い。
DeepSeekのプライバシーポリシーには、明確に「中国本土のサーバーに個人情報を保管する」と記載されている。
DeepSeekを利用するユーザーのアカウント情報やプロンプト履歴などの全てが、中国本土のサーバーに送信されるため、全てが中国に筒抜け、と考えることもできる。
また、DeepSeek R1 に、中国政府の機微に触れるような問題について質問すると、回答がブロックされてしまうのは事実だ。
無料だからと日常使いするうちに、企業の機密情報や個人情報を含むようなプロンプトを、うっかりDeepSeekにチャットしてしまったら、情報漏洩のリスクも見過ごせない(この点は米国製のAIモデルでも同様ではあるが…)。
しかし、幸いなことに、DeepSeek R1 はオープンソースモデルであり、600GBを超える本体モデルを丸ごとダウンロードして、他国の企業であっても自由に利用できる。
米国や日本の企業が、DeepSeek R1 をホストしたサーバーを提供してくれれば、中国産のモデルであっても、何ら問題がないのだ。
ここ数日で、ようやく、プライバシー重視のポリシーを掲げる米国企業数社が、DeepSeek R1のホストサービスを提供しはじめている。
これらの西側の企業の場合、データを米国外に送信しないこと、プロンプト履歴を即削除することなどが、明確にプライバシーポリシーに記載されているため、安心して利用することができる。
本記事では、DeepSeek R1を、中国のサーバーを経由せず利用できる選択肢として、米国企業である「Perplexity」のAI検索・AIチャット機能を紹介する。
プライバシーを重視し、検閲を避けたい人は、これらの選択肢を検討することを勧める。
なお、Perplexityのような消費者向けサービスではなく、開発用途でDeepSeek R1のAPIを利用したい人には、以下の記事で安全にDeepSeek R1を利用できる米国のAPIプロバイダを紹介しているので、そちらも参考にしてほしい。
AI検索大手の Perplexity が DeepSeek R1 を提供開始
「Perplexity」は、検索エンジンとAIチャットを融合させたような、新しい形の検索サービスである。
2025年1月28日、DeepSeek R1 を利用した「Perplexity Pro Search × Reasoning」が実装され、米国・ヨーロッパのデータセンターでホストされた DeepSeek R1 がついに登場した。
Perplexity公式も、Xのポストでその点を強くアピールしている。
DeepSeek on Perplexity is hosted in US/EU data centers – your data never leaves Western servers. The open source model is hosted completely independent of China. Your privacy and data security is our priority.
(PerplexityのDeepSeekは、米国/EUのデータセンターでホストされています。お客様のデータが西側のサーバーから流出することはありません。オープンソースモデルは、中国から完全に独立してホストされています。お客様のプライバシーとデータセキュリティは、私たちの最優先事項です。)
また、Web検索×生成AIに特化しているPerplexityだが、実は、検索機能をオフにして、純粋にDeepSeek R1として使用することも可能なので、その裏技も紹介する。
現状、DeepSeek R1 の小型版ではなく(蒸留モデルではなく)、R1 自体の超大型モデルを、欧米のサーバーで実装し、アカウント登録だけで手軽に利用できる選択肢は、Perplexityしか存在しないように思われる。
Perplexity Pro Search × Reasoning の概要
Perplexityの強みは、ユーザーが与えた質問の意図をAIが理解して、自動で大量のWebサイトを収集・閲覧し、集めた情報を要約して回答してくれる点だ。
特に、「Pro Search」モードを使うと、複数のステップでリサーチを進め、多数の検索ワードを試しながら、より深いWeb検索を行ってくれる。
そして、2025年1月28日、このPro Search機能がさらに強化され、DeepSeek R1 を利用した「Pro Search × Reasoning」が実装された。
プロモードをオンにした上で、プルダウンメニューから、DeepSeek R1 または OpenAI o1 のいずれかの推論モデルを選択することができるようになっている。
Pro Search × Reasoning では、従来のPro Searchを行った後、Web検索の結果について推論モデルが検討を深めた上で回答が生成されるため、さらに回答の的確性が向上している。
しかも、R1 の場合は推論のプロセスも可視化されるため、DeepSeek R1 モデルが、検索結果についてどのような検討をして回答を生成しているか、途中経過を覗き見ることができる。
検索をオフにして、純粋な「DeepSeek R1」として使う裏技
Perplexityは、AI検索サービスなので、「検索なしでDeepSeek R1を普通に使いたいんだけど・・・」というユーザーには合わないのでは、と思うかもしれない。
しかし実は、Perplexityには「Writing」モードが存在し、Web検索を行わずに、AIによる回答の生成のみを行わせることが可能だ。
実質的には、DeepSeek公式のチャットアプリと変わらないことが、Perplexityだけで実現できてしまうのである。
実際、Writingモードで質問をしてみると、「Pro Search」の「Researching」のステップがスキップされ、いきなり DeepSeek R1 の推論のステップに移行した。
これにより、実質的にはAI検索ではなく、単なるAIチャットをしているのと変わらない状態を実現することができる。
ちなみに、推論モードでは、DeepSeek R1 だけでなく、OpenAI o1 も当然同じ方法で利用できる。
また、有料ユーザーであれば、Perplexityの設定画面において、推論モードではない通常の「Pro Search」に用いるAIモデルを指定することも可能だ。
OpenAIの開発するGPT-4o、Anthropicの開発するClaude 3.5 Sonnet、xAIの開発するGrok-2、そしてPerplexityの開発するSonarと、各社のフラグシップモデルが選択できる。
例えば、設定でClaude 3.5 Sonnetを指定して、「Writing」モードでPerplexityを利用すれば、Claudeに登録してClaude 3.5 Sonnetとチャットしているのと変わらないことになる。
つまるところ、Perplexityに登録するだけで、DeeSeek R1 だけでなく、本来はそれぞれ月額課金が必要なOpenAI, Anthropic, xAIのAIモデルを、まとめて利用できてしまうということだ。
無料ユーザーでも1日5回までDeepSeek R1 を利用可能
ありがたいことに、Perplexityの「Pro Search」は、無料ユーザーであっても、アカウント登録さえすれば利用することができる。
1日5回まで、という制限はあるが、AIによるWeb検索と、DeepSeek R1の推論力を組み合わせたサービスは非常に強力だ。
発表直後は1日3回までだったが、現在は5回に拡大されている。ぜひ一度、試してみることをお勧めする。
なお、1日5回という制限を取り除くには、月額20ドルの有料版に登録するしかない。
有料版Perplexityのユーザーであれば、なんと1日500回まで、DeepSeek R1を利用できる。PerplexityのCEO自身が、XでDeeSeek R1の利用回数の拡大を繰り返しアナウンスしており、当初からどんどん増えて500回にまで増えた経緯だ。
DeepSeek公式のWeb版・アプリ版を使えば、50回まで無料で利用できるので、コスト効率を考えると悩ましいところだが、Perplexityのプライバシーの保護、言論の自由の保護というビジョンに共感するかどうかだ。
ただ、DeepSeek R1として使用する以外にも、OpenAI o1、GPT-4o、Claude 3.5 Sonnetなどの主要なAIモデルを、「Writing」モードで使用すれば、実質他社のAIサービスも兼ねることができるので、かなりお得な選択肢とも言える。
ちなみに、筆者の紹介コードを使うと10ドルオフになるので、有料版に加入予定の人は、こちらのリンクから登録すれば初月10ドルオフのクーポンが適用される。